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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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五の五  【静】



【静】、左の「青」は青色の顔料で、穀物の虫の害を防ぐ。これにより豊作となることから、実りを願うこと。
これにより心は安らかとなり、ここから「しずか」の意味になったとか。
【静】とは、まさに心静まることなのだ。

しかし、原則通りに行かないのが世の常だ。
平安時代のヒロイン・静御前(しずかごぜん)、その生涯は決して穏やかなものではなかった。

1184年1月20日、源義経26歳は兄・頼朝の命により、宇治川より京に攻め入った。そして木曾義仲31歳を討つ。
そこから騎虎(きこ)の勢いとなる。

1184年2月7日、一の谷ひよどり越えで平氏軍を破る。
そして、1185年2月19日、奇襲にて屋島の戦いに勝つ。
1185年3月24日には、壇ノ浦の戦いに勝利し、平氏を滅亡させる。
宇治川の戦いを入れて、四戦連勝なのだ。

義経は都大路の歓喜の中で、京に凱旋。
都一番の大スターとなった。

そして1185年4月、桜舞う御所の宴席に義経は招かれる。
そこで都一番の白拍子・静御前と、まるで赤い運命の糸にたぐり寄せられたかのように巡り逢ってしまう。
そして恋に落ち、二人は結ばれる。

しかし、源義経は朝廷に近づき過ぎた。
こんな行動に苛立ちを覚えた兄・頼朝は、義経を朝敵として追討の命を下す。
この追討から逃れるように、秋も深い1185年11月、義経は静御前の手を引いて、西国へと旅立った。
いわゆる静御前との未来にかけた愛の逃避行だ。

しかし、その道中の吉野山、そこは女人禁制。
すでに身ごもった静を連れ、ここで義経は進退窮まった。
そして生まれて来る子のために、悲しく辛い決断をした。

静を京に戻そうと。
その結果、吉野で別れることに。