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アイラブ桐生 51~53

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 用意されいる配膳は、5つです。
横一列に綺麗に並んだその脇に、すでに若い二人の姿が有りました。
前髪をあげて明るい額をみせている笑顔のお嬢さんとは対照的に、
スーツ姿の青年は、膝をそろえたまま見るからに緊張をして
かたまっています。
源平さんと青年は、今日がまったくの初対面になります。
床の間を正面に見据える位置に、源平さんが無言のままに、
まず座りました。
お千代さんと若い二人がその横に並びます。
私は、当然のこととして末席へ着こうとしたら・・・・


 「今日はお前さんも、春玉の、大事なお客さんのひとりだ。
 女将。すまないが、その膳をこちらに。」


 そういうと、
末席の膳を源平さんの隣に運ばせてしまいます。
想いがけず、源平さんと並んで座る形になってしまいました。
それぞれに居場所は定まったものの、
会話が始まる気配などは一切ありません。


階段から人の気配がしました。
舞妓と芸妓が到着をしたようです。
相変らず重苦しい空気と緊張感が漂う中、小春お姉さんと
春玉が挨拶に現れました。
少し遅れて、置屋のおかあさんと小桃の女将も登場しました。
挨拶代わりに、小春姉さんがまず最初の踊り始めます。
丁寧にひとつ畳にすわつてお辞儀をした後、
すくっと立ちあがった小春さんが、
凛とした流し目のまま、静かに地方の三味線を待っています。


 簡略化された所作のなかで、最大限の表現を演じる「京舞」は、
「踊り」とは言わずに「舞」と呼びます。

 小春姉さんが一つ舞を披露した後、
今度は座って地方(じかた)に加わりました。
おかあさんと二人で、三味線の準備をはじめています。
「地方」とは、唄や三味線を得意とする芸妓たちをさしています。
舞を専門とする舞妓や芸妓は「立方(たちかた)」と呼んでいます
小春おねえさんのように、両方こなせる芸妓さんもいますが、
唄や三味線の習得にはかなりの年月を要するので、
必然的に年配者などが多くなるようです

作品名:アイラブ桐生 51~53 作家名:落合順平