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アイラブ桐生 51~53

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 屋形とは、芸妓と舞妓が所属をするプロダクションです。
芸妓を志す少女はここで「おかあさん」と呼ばれる
経営者と寝食をともにしながら言葉や立ち振る舞いなどをはじめとする、
花街での基本的な躾(しつけ)を身につけます。
また舞いをはじめ、その他の広範囲にわたる芸事などを習得します。

 舞妓としてデビューしたあとも、
一人前の芸妓になるまでは、屋形での生活がつづきます。
ちなみにお茶屋の女将も、芸妓や舞妓たちからは
「おかあさん」と呼ばれています。
親子のようなこうした関係が、
花街の女性たちをやさしく厳しく包み込みます。
ひとりの少女が一人前の芸妓として磨きあがるまで、祇園ではこうした
人間関係が連綿と長い時間をかけて続いていくのです。



 この年の、舞妓のデビューは、「春玉」の一人きりです。
それも、祇園では数年ぶりと言う快挙です。
あちこちにあるお茶屋の女将さんや、馴染のお客さん達に、
ひと通りの挨拶がすむともう「おちょぼ」も、立派な「
舞妓はん」として扱われはじめます。
ましてや、久し振りの舞妓の誕生とあって、祇園の町では、
ちょっとした時の人として「おちょぼ』には、連日の声がかかります。
小春お姉さんについて回っていた春玉も、ようやく一本立ちとなり
指名されての主役の席も、徐々に増えてきました。


 同級生の女将さんがやっている「小桃」へ春玉を呼び、
身内だけの「内祝いの宴」を開くことを、お千代さんが準備しました。
宴に呼ばれているのは、一人娘とその交際相手の青年です。
どのようにして説得をしたのかは解りませんが、
源平さんも同席を承知したようです。



 「ひと月あまりも、
 あたしが手塩にかけた手料理を食べさせたんどす。
 そろそろ、年貢の納め時だと、当の本人も覚悟をきめたようです。
 オヤジの我がままを言い過ぎて、
 引っ込みがつかないだけの立ち場です。
 なんとか縁談もまとまりそうですので、
 ぼうやも忘れずに顔をだしてくださいね。
 あんたの場合は、内祝いに付き合うと言うよりは、
 本当は、会ってみたいでしょう?
 舞妓になって、一人前になった晴れ姿の、
 あんたの、半玉ちゃんにも 」


 お千代さんはそう言うと、
悪戯っぽく目を細めて、楽しそうに笑っています。


作品名:アイラブ桐生 51~53 作家名:落合順平