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スペースコロニーの謎の殺人鬼

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金星は地獄の惑星。その重力を使って火星へ




 金星は地球と同じくらいの大きさなので、重力も同じくらいである。ある人の意見だと、地球と金星は、双子の惑星。

 地球から最も近い惑星で、宇宙開発黎明期には、火星よりも期待されたが、旧ソ連の探査機から送られたデーターでは、とても生命が棲める惑星でないことが解った。そして、まだ誰も金星の表面に着陸したことがない。それは、重力が地球と同じだから。100気圧以上の大気圧に500度の高温の世界。

 金星の静止軌道からロープで吊るさない限り、金星に着地できない。
 私は目をつぶって、恐ろしいほど美しい金星の表面を見た。黄金色の雲から、ピカピカ光る稲妻。硫酸の嵐。強烈な空気圧のため夜の部分でも屈折した光が届く。
「こんな時、電脳化は便利なのね」
「エミリー、また、事件があるの。えーと、これは私の意見だけど、このコロニーには切り裂き魔はいないじゃないの。たぶん、『かまいたち』ではないの」
「ナオミ、でもそれを証明しないと、私はいつまでも監禁されたまま。それに監視カメラも電脳化した私では事実を改ざんできるから役に立たない。ナオミ助けて」
「そうよ。こんな脱出用ポットに閉じ込められて」
「このコロニーは最も古いでしょう。たしか木星へ人間を運んだ宇宙船の居住区だけを改造して」
「そうだけど」
「ねえ、ここままだと、他のコロニーでも『切り裂き』事件が起きるわ。古いコロニーから謎の切り裂き現象が」
「要するにコロニーの密封が劣化していること」
「そう。私たち太陽系にさ迷うものたちは、数千万人。地球という惑星では、いろんな国に別れていたわ。もう西欧人もアジア人もない。みんな同じ人類なのよ」
「そうよ」
「ねえ、このコロニー全体をスキャンできない。密封部分から空気が漏れている。タンクからでる空気と漏れている空気がぶつかると『かまいたち』が出来ると思うの。旋風ができそこで大きな真空ができて人が切られるのよ」
「そう思う。コロニーの総督と相談しないと」
「私の意見を信じてもらえるかしら」
 私、エミリーは心配だった。誰も犯人はいない。空気が急に真空になったところで、人間が切られる。そんなことは、宇宙生活している世代には理解できるだろうか。