「哀の川」 第二十九話
麻子は自分のものと合わせて数点買い物をした。勘定はどうせ直樹が払うんだから、と笑いながら、ゴールドカードで支払いを済ませた。食事をして由佳は買い物袋を下げて家に帰った。母親に何か言われそうで、気になったがそのことは強く言わずに麻子に電話をして、礼を言った。娘を大切にしてくれる麻子へは本当に感謝の気持ちでいた。潤子は密かに純一へのプレゼントを考えていた。
純一は神戸に来る前に運転免許を取得していた。消費税が5%になるからと父と母に言われ早めに車を買って貰った。その車に父と母、由佳の三人が乗って東京からやってくると聞いていた。帰りは新幹線で帰ることになっていた。祖父と祖母は、直樹たちが来る準備をあれこれとしていた。余分に三人が泊まるために布団を買いに行かないといけなかったこともあって、純一を伴って阪急デパートへ出かけた。寝具売り場で寝心地のよさそうな、大阪西川の寝具を3点セットで買い求め、配達を依頼した。純一に言われていたパソコンラックも探して買い求めた。昼ごはんをレストラン街で済ませて、三人は地下鉄でなんばまで出かけた。大阪の大阪らしい場所に純一を案内したかったからだ。
戎橋と心斎橋を歩き、アメリカ村へも歩きで行った。東京には無い活気が路面店の威勢で感じ取れた。少しずつではあるが、関西のノリになれ始めていた純一ではあったが、女性の大阪弁はなんだか品が悪く聞こえて好きになれなかった。かわいい顔して、「あほちゃうか!」はない!と思えたからである。
作品名:「哀の川」 第二十九話 作家名:てっしゅう