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てっしゅう
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「哀の川」 第二十九話

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由佳は純一のいない学校が寂しくて仕方なかった。早く卒業して、短大に行くか、麻子が勧めてくれた直樹の会社キオナに入社するかしたいと願っていた。この日も部活を終えて帰り道に麻子の誘いで買い物に付き合った。週末だったので夕方の街は混雑していた。セーラー服の由佳と歩く麻子は、なんだか自分の娘のような錯覚に陥っていた。初めて見たときから一年が過ぎて17歳になっている由佳は今年三年生になり、誕生日が来て18歳になる。早いものだ。体はすっかり大人びてきている。今日は銀座まで出かけて二人で春物の服を買おうと話していた。

春休みを利用して純一に逢いに行くために衣装を買ってあげると、前々から話していたことが実現した。桜の咲く四月の初めに、由佳は麻子と直樹の三人で逢いに行く話しを決めていた。行きつけの衣装店に麻子は入った。すっかりと春物が準備されている。少し背が伸びて由佳は麻子とほぼ同じような体型になっていた。従って衣服も選びやすい。店の担当者は娘と勘違いして、お嬢様、と話しかけてきた。

「娘じゃないのよ、でもそんな風に見えるでしょうね。今年の流行ってこの辺・・・なのかしら?」
「ハイ奥様、そうです。お連れ様にはこちらはいかがでしょう?」
店員は入荷したばかりのスカートを見せた。
「ミニね、スリットが入っているのね。へえ~ねえ由佳さん、どう?綺麗な足しているから似合うわよきっと。これと合わせる上物も考えないとね・・・」
「おば様、こんな高いもの・・・贅沢ですわ」
「いいのよ、もうすぐ消費税が5%に上がるから、今のうちに高いものは買っておかなきゃ。直樹にね車も買ってあげたのよ、大きいでしょ?3と5じゃね」
「そうですが・・・私はなんだか申し訳なく思います・・・」
「あなたは娘なのよ、これぐらいはさせて。純一も喜ぶわよ、きっと」
「そうでしょうか・・・なら嬉しいですが・・・」