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宇宙列車は巨大なジェットコースターみたいなもの

　私たちの制服を管理局に預け、検査済みの私服に着替えた。私服すがたの私たちは宇宙への旅に期待した。

　午後３時、列車が発車する３０分前、私たちは南先生に決められた個室に入った。列車の天上がとても高く感じる。
「あと３０分で宇宙に行く列車がでるのね」
「なんだかワクワクするわ」
「宇宙開発初期の宇宙飛行士も同じ気持ちだっただね」
「そうだね」

　個室にある座席のシートベルトをつけた。
「あと５分で宇宙に行く列車が発車するのだね」
「そう。この５分が永遠と思えるほど長く感じるわ」
「ミー、外の様子はどうなの？」
「晴天だし、きれいな街なみが見えるわ」
正面にあるモニターに前方の景色が鮮明に映し出された。
南先生の指示が入った。
「みなさんシートベルトをつけましたか？あと４分で宇宙への旅が始まります。片道７日の旅ですので仲良く過ごしてください」
「はい」
私たちは返事した。

　午後３時２９分、秒読みが始まった。
『１０，９，８，７，６，５，４，３，２，１，０！発進』
列車は急加速で走り出した。２０秒以内に時速２００キロに達した。私たちはイスに押しつけられる。列車の揺れを感じた。
ゴトゴトという小刻みな振動を感じ、窓には東京と同じような高層住宅が瞬間的に見えた。
「すごい！ねえ、見た。かつて１０００万人が住んでいた街なのよ！」
私は興奮しながら窓の景色を見た。
列車は登り坂を登った。遠心力により足下に強い重力を感じた。


「ま、まるで巨大なジェットコースターみたい！」
私の隣にる佐伯美沙も興奮した。
「途中で止まったりしないかしら」
「ミー、大丈夫よ。１日６本も列車を走らせているから」
大沢多惠は目をつぶった。
「せっかく、モニターに前方の景色が見えるのに」
多惠は体制派であり共産主義社会を認めている。
「ねえ人類の力の偉大さを、今日はじめて実感したわ。感動的だわ」
多惠は意見が異なる美沙の手を握った。
「ミー、これで共産主義の偉大さを実感したわね。人類には無限の可能性があるのよ」
「そうかな・・・。人間のおごりかも」
「そんなことないわ！」
多惠は反論した。　

　私たち３人は着実に宇宙に向かっている。
垂直に列車は宇宙に向かっている。

　列車が発車して３０分後、安定した状態で列車は宇宙に向かった。
シートベルトを外すことが許可された。私たちが座った座席は天上側に移動した。
モニターも移動した。
「徐々に振動が少なくなるのね」
「そう。高いところに行くほど空気が薄くなるから空気抵抗も弱くなるのよ」

南先生から連絡が入った。モニターに先生の顔が映し出された。
「皆さん、まだ地球重力圏ですので緊急時以外は個室から出ないでください。万が一の場合は、個室のドアを手動で開けてください。通路にハシゴがありますので、必ず安全ベルトを着けて下にある非常用ハッチを使ってください」
「はい。先生、了解しました」
宇宙エレベーターは長さ６００メートルの列車を垂直方向に上昇させ続ける。

　私たちはモニターの映像を切り替えた。少しずつ小さくなる宇宙港が見える。雲に隠れる。窓には水平線が丸く見えだし、空は徐々に黒くなってくる。

　あと少しで私たちは宇宙空間に達する。