宇宙列車 私の夏休み
宇宙エレベーターが完成するまでには80年かかった
モルジブの海から伸びる宇宙エレベーターの高さは10万キロもある。最終地点には重量物アンカーがある。大量の水と鉛の中心に核融合発電所が試験的に使われている。核融合炉は有害な放射能をだす廃棄物を出さないが、そのかわり瞬時で人間が死んでしまう中性子が大量に放出される。あくまでも実験用なので、発電に使われない。だから単なるおもりなのである。
22世紀初期、モルジブの近くに小さな人工島が作られた。人口数百人程度の街だった。世界の宇宙開発先進国6ヶ国から人間を月に送ったサターンロケットと同じロケットを年に4回打ち上げる。静止軌道上に宇宙ステーションを建設する。一度に打ち上げられる荷物は125トンまでの制約がある。
静止軌道上の宇宙ステーションから、カーボンナノチューブで作れられた紐を上下に吊す。もう一方は地上へ、もう一方は上空10万キロの彼方へ。
西暦2130年、海上に浮かぶ人工島に宇宙からの紐が到着した。それに伝って、いろんな機材を送り込む。小規模の宇宙エレベーターが実現した。
2150年、宇宙ロケットに頼らないですむために、本格的な宇宙エレベーターの建設がはじまる。人工島も拡大され最盛期には1000万人もの人が住む都会となった。人工島で一生を送る人たちもいる。だから人工島にも墓地があり、幼稚園から大学まであり、多くの企業もあれば、高速道路も鉄道も存在している。いろんな国の人たちが集まる。さまざまな文化と仲良く共存するためには厳しい規則がある。他文化の人の批判をしない。異なる文化の人たちに押しつけない。そのため異文化に不寛容な人である『原理主義者』と『ヒステリックな思考』をする人たちは、全財産没収の上に未開地へ追放される。
宗教原理主義者は絶対に宇宙エレベーター建設には参加できない。モルジブ周辺に近寄らせない。もし宇宙エレベーターが破壊されたら、人類の大部分が死滅してしまうからである。
また、心の狭い人は全財産没収され機械文明がない未開地へ追放される。人工島で共存するには厳しい規則がある。さまざまな文化や言語、習慣がことなるので、お互いに許し合う広い心が必要である。
バベルの塔の時は、混乱が起きて言語が乱れ建設が頓挫したが、宇宙エレベーターは全世界の人たちが一つとなった世界平和のシンボルとなった。
そしてモルジブ人工島都市で産まれ、その地で死んだ人も大勢いる。
宇宙エレベーターが完成した時、テロリスト対策のために、30年かけて徐々に人工島から人々は他の土地に移住した。
佐々木美沙たちが乗っている宇宙列車が開通した時には、人工島は巨大なゴーストタウンとなっている。軍関係者だけが駐留している。
作品名:宇宙列車 私の夏休み 作家名:ぽめ