宇宙列車 私の夏休み
トイレとシャワーの問題
私たちはトイレに行きたくなった。列車が発車して2時間が経過した。
「私、トイレに行きたくなった」
「私も」
美沙は座席の後ろにある細長いドアを開けた。
「ちゃんとトイレもシャワーもあるじゃない」
「でも便器が小さい」
地上を走るときは個室の天上にトイレとシャワーがあるとは思わなかった。宇宙に向かって垂直に向かうとき90度傾くから、私たちが座っている座席の後ろにトイレとシャワーがある。
初めに、私が用をたす。水洗式ではなく真空吸引式なので驚いた。
「な、何なのこれ!」
用をたすときトイレットペーパーを使わない。一人一人が防菌タオルで拭く。女の子にとって重要なのは生理用品の処理である。別の真空吸引装置で汚物タンクに送り込まれる。列車と言うよりも本格的な宇宙船である。
私は防菌タオルを専用のビニール袋に入れた。もう一度使う時は手袋をする。なんだか宇宙飛行士になった気分。
宇宙では水は貴重なものである。
「なんだか慣れたころには静止軌道都市に到着。宇宙に行くのはたいへんだと思ったけど」
「多惠、人類には無限の可能性があるというけど、まだまだだね。宇宙旅行は」
「そうかな・・・。20世紀のスペースシャトルの時代と比べると飛躍的な進歩を遂げたと思うけど。だって1日に3600人もの人を宇宙に送ることができるから」
「あと30年後には第二宇宙エレベーターが完成する。そうすれば1日1万人もの人が宇宙にいけるわけね」
「でも快適性の問題があるわ」
「30年後には宇宙列車の設備が改善されると思うわ」
「でも、この個室狭いわ」
「仕方ないでしょう」
私たちは窓をから星を眺める。地球が少しずつ丸みを見せる。そして、ストレス解消に、私たちはカラオケで歌を歌う。
「ミー、歌が上手くなったわね」
「さっちゃん(私、佐々木美沙のこと)も、ダンスも上手になったし、身長も伸びてスタイルが良くなったわ」
「そんなー。照れるわ」
「多惠、何か歌いなさい」
多惠は英国のアイドルの歌を英語で歌った。
「英語の発音が上手じゃない」
私と美沙は拍手した。1日は、ほのぼのした気もちで過ごせた。
小型の冷蔵庫から今日の食事をオーブンで解凍した。電子レンジだと強い電磁波で周辺にある電子機器を狂わせるから使わない。
ウエットティッシュで手を拭き簡易式スプーンとフォークで温めた食事を食べる。私たちは宇宙空間で最初に食べたのがイタリアンスパゲッティ。パスタをトマトケチャップでかき混ぜただけの質素な料理。夕食は午後7時。それからタブレット端末で学校の勉強をして、寝る前に、私たちは座席の後ろにある部屋で自分の身体を拭いた。
「さっちゃん。気分はどうなの?」
「シャワーは3日に1度しか使えないみたい。だから濡れたタオルで自分の身体を拭くだけなの」
「えー気もち悪い!」
「仕方ないでしょう。水は貴重品だから。スペースシャトルのように少人数なら燃料電池から出てくる水で間に合うけど、この宇宙列車の場合、600人の乗客がいるから水はとても貴重なの」
私は髪を洗うがシャンプーの泡をタオルで拭き取り、クシで髪をとかすしかない。他の二人も個室に入り身体を拭き髪をきれいにした。
個室内では石鹸とシャンプーの心地良い匂いがする。気分が良くなる。ハーブの匂いで心地良くなり、私たちは座席をしまい込み簡易式ベットを出して横になる。私服からパジャマに着替える。荷物を減らすためにタンクトップとショートパンツみたいなかわいらしいパジャマを着る。それが7着ある。ベットの上で横になる。私たちは海水浴に行くときの水着姿みたい。長い脚を出した状態である。でも異性の目がないから恥ずかしくない。寝る前に歯を磨く。当然、歯磨きガムもある。
窓から見える地球も暗くなっている。インドやバングラディシュの都会の灯りがみえる。窓を閉めて部屋を暗くして寝る。
「ミー、多惠、おやすみ」
「おやすみ、さっちゃん」
「みんな、おやすみ」
私たちは午後10時に寝る。宇宙空間を上昇する列車は、とても静かで、外を見なければ宇宙に行ったとは思えない。
作品名:宇宙列車 私の夏休み 作家名:ぽめ