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中川 京人
中川 京人
novelistID. 32501
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はは、負うた子に教えられて大根をもらう

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 息子の意外な粘りを見た思いだった。
 夫婦ふたりが小学四年坊主を説得してもとに戻させるのに、じつに小半時を要したのである。
 七時を回ってようやく息子は帰ってきた。もちろん箱は持っていない。
 小学生がこんな時間までいったい何をしていたのかと問いただしても、不貞腐れている様子で、生半可な返事しかしない。
「あれでよかったんだ。つらかったろうけど」
 声をかけても黙々と飯をかっ込むだけの息子を見て、まあ彼なりに抵抗を示しているんだろう、これからは難しい年頃に入っていくなあ、などと、ぼんやり考えながら、テレビのリモコンで息子の好きな番組に先回りして変えてみたりした。

 それから二日後のこと。
 ちょっと早いかもしれんが、と言いながら母が大根をぶら下げてやってきた。畑からの帰り道である。
 この近くに母の実家の畑が一反ばかりあって、細かく区分けした畝で多種目の野菜を育てている。父と母はうちの家の前の小路を自転車こいで、無償で借りているこの畑に毎日のように野良に出ているのだ。