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中川 京人
中川 京人
novelistID. 32501
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はは、負うた子に教えられて大根をもらう

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 事情を聞こうにも、件の、宅配ピザがこんなに遅いのはどんなもんだろう、というような表情のままで口をつぐみ要領を得ない。仕方なく箱を取り上げて上蓋を撥ね、中を覗き込んでみると、果たして生後ひと月にもならないような雉毛が、バランスを取っているつもりなのか、裸のままでダンボールの底に貧弱な爪を立てている。培養されている黴のように全身に和毛が垂直に立っている姿が哀れだ。相手にされていると気づくや、ちっちゃな飴細工みたいな歯を剥いて、ニイニイと偉そうに鳴いてござる。
 ほう、かわいいなあ、と手を伸ばしかけてあわててかぶりを振った。
「だめだめ、うちじゃあ絶対、無理」
 息子にも、その友達にも、いまさら説明するのも面倒なのだが、すでにうちでは十四歳になる雌猫を飼っていて、こいつはまったくもって凶暴なやつで、よその子猫なんぞが居間に上がりこんだ日には、ものの五分もたたずに悲しい結末を迎えるのは目に見えているのだ。
 それなのに息子はしぶとく食い下がった。
 可哀想だ、このままでは死んでしまう、人間は自分勝手だ、などとご託を並べ立てて、なかなか引き下がろうとしない。
「いいから、もとの場所に返してきなさい」
 寒風の中、半開きにした玄関扉の向こうでこちらの様子をうかがっているふうの友達にも被さるように、厳然たる調子で息子に言い渡した。