はは、負うた子に教えられて大根をもらう
──あそうか、わかったわかった。この子はあれだ。天邪鬼さんなんだな。
気持ちが素直に顔や態度に出ないのだろう。だいたいが、生まれた翌日に産院の看護師さんに顔を見られるなり「あらあ、なんでこんなに困っちゃってるのかな」と笑われたほどなのだ。眉毛のあたりが渋く曇っていたらしい。それは九年後のいまもあまり変わり映えがしないようだ。
その天邪鬼ぶりにもまして、人見知りや引っ込み思案もあり、さらにはまともな挨拶すら困難にするはにかみが加わる。総じて人との交わりが苦手らしい息子の挙動を見るにつけ、遺伝とは、身体的な特徴だけでなく、性格にも及ぶものなのかと夫婦で嘆息する日々が続いたのだった。
十一月のある土曜日、息子が外遊びの途中に、同じクラスの友達をわが家に連れてきた。それはいいのだが、このとききゃつらは小ぶりのダンボール箱を大事そうに携えていたのだ。玄関先で不審がる妻とは反対に自分にはピンと来た。
──こいつら、猫の子でも拾ってきやがったか。
作品名:はは、負うた子に教えられて大根をもらう 作家名:中川 京人