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中川 京人
中川 京人
novelistID. 32501
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はは、負うた子に教えられて大根をもらう

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初めて会う人か、もしくは長年ご無沙汰している知人に合って話していると、必ずといっていいほど仕事のことを聞かれる。目の前で気張っている馬の骨が、実際どういう人間なのかを知るには、仕事を聞いてみるのが一番ということなのだろうか。
 仕事は何かと聞かれたら自営業と答える。すると相手は、何をしているのか、と重ねて問うてくるので、具体的にこれこれだと説明すると、途端に相手は興味を失って、たいていそれで一件落着となるのである。それなので次に会う人には、小説家だと言ってやろうかと思っている。おもしろいぞう。──すみません、ちょっと名前は。いやあ書いてるのビシバシの官能系なんで──、とか言って。ふふ。
 自営業といっても、決まった取引先があるわけではないので、新規開拓は欠かせない。
 営業はある意味、質より量。馬鹿になって訪問しまくるのがいちばん手っ取り早いともいうが、さて現場を踏んでみると、何を売り込むにしろ、人さまの心を動かすのはじつにたいへんなことなのだと痛感する。いやもう、早い話がたいへんなのである。

 自分には家族がいる。息子は小学四年であるが、いじらしい性格である反面、ひねくれてもいる。それではいいとこなしではないか。一歳半の検診のときだったか、担当した年配の女性職員が、ままならない息子の行動に手を焼いていみじくものたまったものだ。