海のたより
──ところてん──
寒天ブームのおかげで、テングサがよく売れているので、この夏、実家の母もいつも以上に気合いを入れてテングサを採りに行きました。
実家のある地区にいくと、家の庭先ばかりか、狭い道路の脇にまでテングサが干してあります。
おかげで、自動車でそこを通る人は、テングサを踏まないように窓から顔を出して用心しながらゆっくり運転しなくてはなりません。無神経にもテングサを踏んで行こうものなら、たちまちその近所のおかみさんたちに苦情を言われてしまうのです。
もっとも、これはテングサに限らず、若布の時でもそうですが、漁師の町では海産物の方が大切なのです。
先月、子どもたちが海で泳ぐついでに海藻なども採ったと書きましたが、テングサも例外ではありません。子どもながらも、大人の役に立とうと、テングサも採りました。
そのころもテングサは売りに出していましたが、必ず少しは自家用に残していました。夏の間、ところてんは子どものおやつになったのです。
ところてん突きで突いて酢醤油で食べたり、さいの目に切ってシロップをかけ、缶詰の果物やあんをのせてあんみつにしたり。シンプルなところではそのさいの目に切った物にじかに砂糖を振りかけて食べたりもしました。
昔は、駄菓子屋さんでも夏の間、かき氷やところてんを売っていました。よしずで日除けした店先に出した縁台に腰掛けて食べるかき氷やところてんも、涼しくて風情あるものでした。
乾燥したテングサをもらって、自分で作ったこともあります。一度分量を間違えて、柔らかくできてしまい、突いて食べることも、さいの目に切って食べるにも不都合になってしまいました。
さあ、どうしようと困った時、ふと中華のデザート「オウギョウチィ」のことを思い出しました。ものは試しと、適当に切ったところてんにシロップをかけ、レモンの輪切りを細かくしたものと、クコの実を散らしてみました。
このアイディアは大成功。「なんちゃってオウギョウチィ」に変身したところてんも、結構おいしく食べることができました。
でも、オウギョウチィは海藻ではなく、クワ科の植物の種からできるものと知って驚きました。