海のたより
──夏の子──
夏休みの始まりは、決まって「熱射病で寝こむ」ことでした。休みになった開放感で、一日中海で泳ぎまくり、強力な太陽光線をうけたあげく、ひどい日やけと熱でダウンしてしまったのです。
「熱中症」という病名で、実は死に至る怖い症状だということを大人になってから知りましたが、わたしが子どもの頃には、そういう症状で亡くなる人がいたと言うことを聞いたことがなかったので、別に変わったことではないと思っていました。もしかしたら、今の子どもたちより体力があったからかもしれません。
さて、当時は学年にこだわらず、大勢で遊びました。みんなでいろんな知恵を出し合って遊んだので一日中飽きることはなく、それは海で遊ぶときも例外ではありませんでした。
海に行くときには、お昼に食べるおにぎりや冷たい麦茶の他に、トマトやマクワウリを持っていき、泳ぎながらの遊びの道具にもしました。
だれかがまず海にトマトやウリを投げ入れます。すると一斉に飛び込んで、それをとりに行くのです。一番先にとった人がまた別の場所へ投げ、また争って泳いでとりに行きます。
この遊びで疲れると、そのトマトやウリを食べながら一休みするのです。そのあとはまた違うことをして遊びました。
柔らかい灰色の石をぬらしてコンクリートでこすると、絵の具のようになるのですが、それを身体に塗りつけます。たったそれだけのことですが、まるでどこかの原住民になったみたいなのがおかしくて、おもしろがってやりました。
また、アオサやホンダワラを採ってきて、岸壁や岩の上にふとんのように敷き詰めてそこに寝てみたりしました。ひんやり冷たくて気持ちが良かったものです。
そして当時の子どもはたくましく、遊ぶついでに磯でオオハやツノマタなどの海藻を採って売りに行き、おこづかいにしましたし、シッタカやサザエなども採って、ちゃんとおやつや晩のおかずも手に入れていたのです。