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せき あゆみ
せき あゆみ
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海のたより

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──かつお──



先日、朝のニュースでK漁港のかつおの水揚げの様子が映し出されました。これからかつお漁の最盛期。港は一年で一番活気づく季節です。

県外からのかつお船が次々と港に入ってくると、町中にサイレンの音が響き渡ります。でも、今年はちょっと勝手がちがいます。サイレンの音がほとんど聞こえてきません。どうも不漁のようなのです。
目に青葉、山ホトトギス、初がつお。とはいうものの、そのさわやかさも今年はあまり感じられません。
桜にしろ藤にしろ、花の時期は例年より早いのに、いつまでも気温は低い……。一体どうなったのでしょう。以前、かつおが大漁の年はグミの実もたくさん実をつけるという話をここで書いたことがありましたが、この分ではグミも実をつけないかもしれません。

かつおの季節はこれから夏まで続きますが、その間にたくさん獲れることを願いつつ、やはりここに書いたくせに、一度も作っていない料理『いりず』に、今年はぜひ挑戦したいと思っています。
ところで、初夏の味覚『初がつお』として喜ばれるかつおですが、本当はこの時期よりも秋のもどりがつおの方が、脂がのっていておいしいのです。

昔は船の技術が発達していなかったので、あまり遠くまで漁に行くことができず、かつおの群れも比較的沿岸を通る(フィリピン沖から黒潮にのって北上する)この時期にしか獲ることができませんでした。
それが、船外機の発達によって、かなり沖まで漁に出られるようになって、沖を通る(東北から南下する)もどりがつおが獲れるようになったのだそうです。

かつおはなによりも鮮度が大事ですから、地元の漁師の獲った一本釣りのものに限ります。網で獲ったものはまとめて水揚げするので、船倉に数日間入れっぱなしのものもあるので、鮮度に疑問があるのです。
この時期、コアゲといって、かつおの水揚げを手伝う人たちがいるのですが、その人たちがあまったかつおを船主からもらって自分たちでわけたあと、安く売り歩く風景が見られます。

1本1000円といって、破格の値段ですが、よほど選ばないと、鮮度がおちたものを買う羽目になってしまいます。
わたしは、生まれた地区の人からしかふだんは買わないのですが、いちど、コアゲをやっている知り合いが売りに来たので、買いました。選ぼうにも、残った最後の2本でしたから、それを買ったのですが、1本は何とか鮮度はよく、刺身で食べられましたが、もう1本がちょっと身が柔らかくなってしまっていたため、角煮にしました。
かつおを1本買うときは、腹の線がはっきりしているものを選んで下さいね。

作品名:海のたより 作家名:せき あゆみ