小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

海のたより

INDEX|21ページ/24ページ|

次のページ前のページ
 

──ひな祭り──



今年もひな祭りの季節がやってきました。
我が家は男の子ふたりなので、ひな人形には縁がありません。ちょっと華やかさに欠けるのが残念です。

ですが、この時期、市を挙げてのビッグひな祭りが開催されていて、町中が華やかに彩られています。
今年で六回目になるこのイベントはすっかり定着し、ニュースなどでも必ず取り上げられるようになり、団体旅行のツアーにも組み込まれているようです。
全国各地から不用になったひな人形を譲り受け、市内の中心部の各所に飾るのですが、開催期間は二月の末から三月三日をはさんで一週間です。

メイン会場は市民会館で、ほかに市役所・図書館にも飾られています。商店街の各店舗もいろいろ工夫を凝らして、親王飾りやマスコットびなを商品のわきに飾ったりしているのもほほえましい風景です。
とあるお店には明治・大正・昭和前期・後期と親子四代分のおひな様が飾られ、それぞれ時代を反映した人形の顔立ちや衣装に、買い物も忘れて見入っている人もいました。
今年の目玉は一体の大きさが約1メートルもある享保雛。メインの市民会館に飾られていて、来場した人たちはこのおひな様の前で、かわるがわる記念写真を撮っていました。

屋外では神社の階段やお寺の山門前にも飾られます。中でも一番の見所は遠見岬神社の70段の階段に飾られたものです。
なんといってもこれがビッグひな祭りの顔でしょう。市民会館から遠見岬神社へやってきた人たちは口をそろえて「うわー、きれい」と歓声を上げます。
「そういってもらえると、たいへんだけどやってよかったと思う」と、スタッフの一人が言っているのを小耳に挟んだことがありました。
そうです。このおひな様、見る分には華やかで圧巻ですが、ひとたび天気が崩れたら、もうたいへん。スタッフが大急ぎでしまわなくてはなりません。

スタッフは市の職員や商工会の人たち。そして地区の婦人会の人たちです。ひな祭りの期間中、屋外の展示場所では、朝六時ころからひな壇に人形を飾り、夜八時ころにしまいます。
一日中天気が良ければ問題はないのですが、雨がぽつぽつしてきたら、大急ぎで撤収です。いつか、テレビのクイズでやりましたが、撤収する時間はわずか10分という早さです。
今年は悪天候が続いていて、一番の人出が見込めたはずの日曜日が雨でした。
ビッグひな祭りを陰で支えるスタッフの苦労が報われるよう、せめて良い天気に恵まれるといいのに、と思います。

作品名:海のたより 作家名:せき あゆみ