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せき あゆみ
せき あゆみ
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海のたより

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──はばのり──



昨年の12月のこと、母が突然「懐中電灯貸して」とやってきました。夜、『はばのり』をとりに行くというのです。
「ひとつは腰に付けて、もう一つは肩にかけて使うんだけど、うちには一つしかないから」
身振り手振りで説明する母に、夜なのに大丈夫かと心配していうと、みんなでいくから大丈夫だと聞く耳をもちません。
たしかに、夏によくいく磯だから、母にとっては庭みたいなものでしょう。しかし季節は冬。夏とは勝手が違うのです。しかも夜。あぶないことこのうえない。
けれどわたしの心配をよそに、「だっていい稼ぎになるんだよ。うちでぼけっとテレビを見ているよりずっといい」と貸した懐中電灯を手に、笑いながらいってしまいました。
 はばのりは、聞いたことがあっても食べたことはない。それに今まではばのりなんて採りに行ったこともないのに……。

話によると房総半島でも、北のほうではお正月に欠かせない食材で、『はば雑煮を食べないと正月がきた気がしない』とまでいわれるほどなのだそうです。
 そういえば、勝浦より少し下った天津小湊町(鴨川市に合併)ではばのり漁は盛んで、しかも漁の時期が冬の数日間に限られているためか、それがはじまるとテレビのニュースにもなっていたのを見たことがあります。
ところが今まで話題にも上らなかったこのあたりでも、とるようになったということは、品薄になったのでしょうか。
10枚(普通の海苔と同じ大きさ)で2000円から、高いものでは1万円もする高級食材だというのにもびっくり。
房総の雑煮はかつお節のだしに醤油味仕立てだが、そこにハバノリをちぎって振りかけて食べるといいます。
今回のはばのり漁は2日ほど。岩に張り付くように生えているものを掻き取り、塩水で洗って天日で2日間干します。
そして、今年もはばのり漁が解禁になったというニュースをみたら、さっそく母がやってきました。今度はなにかと思ったら、「ラベルを作って」というのです。
昨年は一括で漁協名でだしたようですが、今年はとってきた個人の名前も表示してだすのだそうです。
40枚ほどつくって渡したが、今年はいくらのもうけになったのでしょうね。
元気なのはいいけれど、少しは年も考えて、と娘は思うのだけど……。


作品名:海のたより 作家名:せき あゆみ