海のたより
──冬の鍋──
寒い冬の晩は、鍋物に限りますね。
魚介類や肉類の他に、野菜もたくさん食べられるので栄養もあるし、身体も温まります。
コタツに入って、鍋をつつきながら、熱燗をきゅっとひっかけるのもおつなもの。
それはともかく、鍋物はおかずをいろいろ作らずにすむ、という主婦のつよ〜い味方でもあります。
先日も仕事場で「晩のおかず何?」と聞かれ、「寒いから鍋」と答えると、「いいね、うちでも鍋にしよう」という声。
そこで、今度は鍋の材料に話題が移りました。
わたしが「金目鯛」というと、「え〜〜贅沢!」といわれました。
当然です。でも、我が家で使うのはもっぱら「あら」です。ほとんど出汁に使うので、あらで充分。あとは安いタラとかアコウダイを使います。そういったら、みんな「なるほど」と納得してくれました。
本当に金目鯛を使おうものなら、次の日から数日間の食事は「ねこまんま」を覚悟しなくてはなりませんからね。
昔は、冬になると父が金目鯛を釣ってきたので、売れない小さな物はおかずに残してくれました。まるまる一匹塩焼きにして食べたり、鍋物にもふんだんに使いました。それも漁師だったからできたこと、たとえ漁師町でも、普通のサラリーマンの家庭ではできないことでした。
今では夢のようですが、「あら」でもちゃんと金目鯛を堪能できます。それに身よりも「あら」からのほうが出汁が出るのですから。
さて、金目鯛は頭が大きいので、それだけで鍋がいっぱいになってしまいます。身がほとんどないのに、入れたままですと、他の具が入りません。先に充分出汁を取ったら、頭を出してしまいます。それから野菜や他の魚の身を入れます。
みそ味とか醤油味にする家もあるようですが、わたしは実家でしていたように、すまし仕立てで、ポン酢をつけて食べます。
すまし仕立てですと、あとからご飯を入れて「おじや」に出来ます。わたしはあまり好きではありませんが。でも、せっかく出汁が出ているのですから、それを活用しない手はありませんよね。最近では食べるようになりました。
野菜も魚介も肉も一緒に食べられる鍋料理。寒い冬にはもってこいですが、素材には、やっぱり金目鯛がまっ先にうかびます。