海のたより
──海藻(草)のはなし──
この夏(2006年)、母はツノマタ採りに燃えていました。
テングサもあいかわらず需要があって、磯がひくととりにいっていましたが、7月の末頃から、急にツノマタの需要が増え、取引価格も上がったので、そちらもとるようになったのです。
「ツノマタ」というのは、テングサ同様海藻(草)です。潮間帯の岩に生える4〜15センチくらいの丈の平たい草で、葉の先が丸くいくつかに別れています。テングサは食用ですが、ツノマタは主に建築用の糊の原料になります。
インターネットで調べたら、「左官用にもっとも適した糊」になるすぐれもの。ですが、煮出すのに時間かかり、においも強いために敬遠されがちだったようです。
ところが最近になって、乾燥・粉末にしたものが出回り、使い勝手もよくなったため、ふたたび注目されるようになったとか。シックハウス症候群などのことを考えると、自然素材ですから、人体にいいことですね。
このツノマタ、こちらでは食べるということはしませんが、よそでは食用にしているところもあって、おみそ汁やサラダで食べるようです。もっとも、この辺に生えているのとは種類がちがうのかもしれませんが。
こちらでは食べないけれど、よそでは食べているという海藻(草)に、カジメがあります。少し深いところに生える丈の高い海藻(草)で茎が太く長く、先端がやつでのような葉になっています。
わたしの知り合いに、能登出身の方がいますが、その方の好物がカジメのみそ汁としった時は、ちょっと驚いてしまいました。
なにしろ、昔この町にはカジメから火薬を作る工場がありましたので、カジメにはそういうイメージしかなかったのです。
城山三郎氏の著作『白い石炭』は、その工場の経営者をモデルにして書かれているそうですが、浜に打ち上げられ、乾燥して白くなったカジメの茎は、動物の骨のように見えて、あまり気持ちのいいものではありません。
おみそ汁は葉の部分を使い、とろみがあっておいしいそうです。でも、さめるとにおいが強くなっておいしくなくなるので、暖かいうちがいいと聞きました。
そういえば、児童文学者の故・高垣眸先生が、戦時中この町にいらして、食糧不足を解消しようと、カジメを加工してカステラ状の食べ物を作ったと、生前話しておられました。
名付けて「カクテーラ」。
どんな味だったのか、作り方を伺わなかったので、今となっては知るよしもありませんが、浜に打ち上げられて山のようになっているカジメをみると、何かに利用できないものかと思います。