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せき あゆみ
せき あゆみ
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海のたより

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──夏のごちそう──



弟が以前、だれかに「今までに食べたものの中で、一番おいしいとおもったものは?」と聞かれた時、「母か、姉の作ったサザエのカレーライス」と答えたそうです。

サザエと聞いて、その場にいた人たちは「へえ〜」と感嘆の声をあげたとか。

そうかもしれません。海の町ならではの食材ですから。
カレーライスというと、大抵の子供が好きですね。それも大きなお肉が入っているのが。お肉の大きさや数で、兄弟げんかなんてこともありましたっけ。

子供の頃、暗くなるまで遊んでいると、必ずどこかの家からタマネギを煮るにおいがしてきました。
それが一緒に遊んでいる友だちの家からだと、「あ、△△ちゃんちは今日はカレーだね」などといい、なんだか急に家が恋しくなって、遊びをやめて家に帰ったものです。

ある夏の夕方。いつものように家に帰ると、母が言いました。
「カレーにしようかと思ったら、肉を買い忘れちゃって。今から買いに行くと間に合わないから、サザエをいれちゃった」
「ええ〜〜、肉じゃないのぉ」
と、わたしたちはブーイング。
 すると、父が、
「よそじゃ、肉のかわりにサザエをいれるって言ってたぞ」
といったのです。聞くと、海士をやっている家では、大きなサザエが手にはいるので、肉のかわりによく使っているのだそうです。

うちでは、母が磯には行っていますが、海士(もしくは海女)のように深いところに潜るわけではないので、それほど大きなサザエは手に入りません。

ですがその頃は、磯べりでも今よりもっとたくさんのサザエが獲れたので、小さくても数で勝負とばかり、カレーの中にはサザエがたくさん入っていました。

サザエから出た汁で、カレーはちょっと黒ずんでいます。でも、それがレストランのカレーのようで、見た目はわくわくしました。

けれど、初めてなので、ちょっとおっかなびっくりです。

ところが、一口食べたら、サザエの風味がきていてとてもおいしいのです。サザエの味もカレーの味も、ほどよく調和しつつ、それぞれが際だっているのです。
 なんでいままでサザエを入れて作らなかったのか、後悔するほどでした。(そのころは自分じゃ作らなかったのに)

それ以来、我が家では、夏のカレーはサザエで作るようになりました。

弟がサザエのカレーをお気に入りだというのは、その話を聞くまでは、わたしは知りませんでしたが、たしかに、一度食べたら忘れられない、夏のごちそうの味です。

今はサザエも少なくなったので、贅沢な料理となってしまいました。

作品名:海のたより 作家名:せき あゆみ