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夜明けの呼び鈴

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1週間後の月曜、またお母さんから病院行きを頼まれた。
今度は洗濯物ではなく、紙おむつが足りなくなりそうだから、届けてくれということだった。
学校は先週から春休みに入っていた。部活もやめちゃって、一日中家でごろごろしているんだからと、押し切られてしまった。
私はしかたなく、大きな紙おむつのパックをぶら下げて病院に向かった。
駅から病院までの道すがら、私が大人用紙おむつのパックを抱えて歩いていると、すれ違う人がときどき二度見するのがわかった。大人用紙おむつを持った女子高生って、そんなに珍しいのだろうか。

おじいちゃんは、先週よりもさらに衰えていた。私は紙おむつのパックをロッカーに押し込むと、いつものようにいすをベッド脇に運び、腰かけた。
「おじいちゃん、また来たよ。」
私がそう言うと、今日は珍しくおじいちゃんは私の方を向いた。だけどやっぱり、視線は私を飛び越して背後のどこかを見つめている。
「おじいちゃん、先週私が言ったこと、覚えてる?おばあちゃんに逢いたいって尋ねたよね。」
おじいちゃんは口を半開きにして、どこかを見ている。
「私、思い出したんだ。おじいちゃんの家、おばあちゃんの写真がいっぱいあったよね。すごく若くてきれいなおばあちゃんは大きく引き伸ばされてたんすの上、伯父さんやお父さんと一緒に写ってるおばあちゃんと、初孫の私を抱いて笑ってるおばあちゃんは一緒のパネルに入れて仏壇の横、遺影に使ったおばあちゃんの写真は額縁に入れて鴨居。」
「おばあちゃんの服とか化粧台、もう要らないのに元の通り、ぜんぜん変えてないよね。」
私はおじいちゃんの顔を見ながら話した。
「おじいちゃん、おばあちゃんに逢いたいよね。もう少ししたら、逢えるかも知れないよ。」
私がしゃべっていることを、おじいちゃんが理解できるはずがない。
「そしたら、私も結花に逢いに行こうかな・・・」
私はそこまで話すと、おじいちゃんのベッドに突っ伏した。そのとき、なにかが私の肩に触れた。顔を上げると、おじいちゃんが掛け布団から腕を抜いて、私の肩を触っていた。私はおじいちゃんに何が起こったのかと、おじいちゃんの顔を見つめた。
作品名:夜明けの呼び鈴 作家名:sirius2014