夜明けの呼び鈴
「おじいちゃん、結花って知ってる?小さい頃から私の親友だったんだけど、去年死んじゃったんだ。」
「結花は私のこと、覚えてるかな。今のおじいちゃんみたいに、忘れちゃってるのかな。もう一度、結花に逢いたいよ。また一緒に陸上やりたいよ。なんで私を置いて一人で行っちゃったんだろ。」
おじいちゃんにはなんの反応もない。そんなおじいちゃんを見ていて、少しだけおじいちゃんのことも気になり始めた。
「おじいちゃん、おじいちゃんもおばあちゃんに逢いたいって、思う?おばあちゃんのところに行きたいって、思う?」
やっぱり、おじいちゃんは反応しない。
「私って、ばかかな・・・」
私はいすから立ち上がった。
「おじいちゃん、今日はもう帰るね。また来るよ。」
私はそう言うと、部屋から出た。今まで言えなかったことを言えて、少しだけ気分が晴れていた。
作品名:夜明けの呼び鈴 作家名:sirius2014