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夜明けの呼び鈴

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「ねえ、今度の土曜日、頼みがあるんだけど。おじいちゃんの病院に行って、洗濯物届けて来て欲しいの。」
テレビを見ていた私に、突然母が話しかけて来た。
「えー、なんでわたしなの。」
「お母さんもお父さんも仕事なのよ。お願い。」
お母さんは小さな医院の事務をやっていて、土曜日は休みではない。3人でシフトを組んで、週4日働いているのだが、忙しい土曜日はなかなか休めないのだ。
「一昨日、お母さんがおじいちゃんのところから、洗濯物なんか持って来ちゃうのがいけないんでしょ。」
「お兄さんと英子さんばかりに頼っているわけにもいかないでしょ。少しは、私達だっておじいちゃんのこと、やってあげなきゃ。」
お兄さんと言うのは、お父さんの2歳上のお兄さん、つまり私の伯父さんで、英子さんと言うのは伯父さんの奥さんだ。
「英子さんは専業主婦なんだからいいんじゃない。」
「そうも言ってられないでしょ。おじいちゃんから見たら、同じお嫁さんなんだから。」
お母さんは、いつもの決まり文句を言う。
「香織は小さい頃、おじいちゃんにかわいがられたんだから。それくらいのこと、やってあげてもいいでしょ。この前のお正月には、お年玉だってもらってるんだし。」
「小さい頃のことなんか、覚えてないよ。お年玉はもらったけど・・・」
もう耳にタコができるくらい、聞いた話だった。私は小さいころ、おじいちゃんの膝の上が大好きで、おじいちゃんの家に行くと、いつも胡坐をかいたおじいちゃんの膝の上に座っていたそうだ。でも、もうまったく覚えていない。
「おじいちゃん、あなたが生まれたときはすごく喜んだのよ。久し振りの女の子だって。」
「そりゃ、伯父さんとお父さんと、男二人だったからね。でも、わたしだって、いつも暇とは限らないよ。」
「高校のクラブも止めちゃって、土曜日は予定でもあるの?」
「特にないけど・・・」
「じゃ、いいでしょ。お願い。」

こんな感じで、最終的にはお母さんに押し切られて、今日おじいちゃんの病院に来たってわけ。
確かに高校の陸上部は去年の12月にやめた。小学校からずっと一緒で、中学でも同じ陸上部だった結花がいなくなってから、特に仲の良い子もいなくなって、部内の雰囲気もなんだか良くなくて、それでもう陸上部にはいられないような気分になってしまったから。
作品名:夜明けの呼び鈴 作家名:sirius2014