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夜明けの呼び鈴

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国道に沿って緩やかな上り坂を上って行くと、小高い丘の上に大きな白い建物が現れた。目指すN市市立病院は、数年前に新築された新しい病院だった。

休日の面会者用入口は、正面入り口から横に回った所にあった。入口を入ってすぐの場所にある警備員詰所のような受付で、ノートに必要事項を記入するのがルールのようだった。私は洗濯物が詰まった紙袋を床に置き、ノートの面会者名の欄に「山下香織」と、入院者名の欄に「山下幸造」と書き込んだ。

山下幸造。
それは、今年で87歳になる、私のお父さんのお父さん、つまり私のおじいちゃんの名前だ。10年ほど前におばあちゃんに先立たれ、家で一人暮らしをしていたのだけれど、先月末に自宅で転んで手をついた拍子に腕を骨折し、この病院に搬送された。病院で診察された際に、医師が熱があることに気付き、内科の診察をしたところ、肺炎に罹っていることがわかった。
そのときに入院して以来、もう3週間になるけれど、いまだに退院の目途が立たないそうだ。
肺炎が治りかけても、食事を摂ると「誤嚥」で肺炎がぶり返してしまう、とお母さんが言っていた。「誤嚥」の意味はわからなかったけれど、そのために今は一切口から食事を摂れず、点滴で栄養補給しているそうだ。

私は病院内の案内板を見ながらエレベータにたどりつき、上ボタンを押してエレベータを呼んだ。間もなく4基あるエレベータの内の1台のドアが開いたので、乗り込んだ。おじいちゃんの病室は、最上階の一つ下の7階なので、エレベータの操作パネルの7のボタンを押した。ドアが閉まり、エレベータが動き出す。
上昇するエレベータの中で私は、母が私におじいちゃんのお見舞いを頼んだときの言葉を思い出していた。

作品名:夜明けの呼び鈴 作家名:sirius2014