白月と源造じいさん
バウーン!
凄まじい銃声が源造じいさんの背後から聞こえてきました。
同時に源造じいさんの胸に不安がよぎります。
「白月……」
源造じいさんは引き返して、先程の淵まで駆け登りました。
すると、だらしなくすべての脚を投げ出し、倒れている白月の姿がそこにありました。
「白月ーっ! 大丈夫かーっ! しっかりしろーっ! 白月ーっ!」
白月は苦しそうに口を開け、ゼイゼイと息をしています。白月が息をするたびに、お腹が大きく膨らんだり縮んだりします。白月の目は源造じいさんに「助けてくれ」と訴えているようでした。
源造じいさんが白月の身体を見ると、背中に銃で撃たれた跡があります。
程なくして、河原に四人の男たちが降りてきました。肩に最新式の猟銃を下げています。どうやら趣味で動物を狩るハンターのようです。
「お前らか! わしの白月を撃ったのは?」
源造じいさんが泣きながらハンターたちに食ってかかりました。
「なんだ? このじいさん」
ハンターたちはポカンと口を開けています。源造じいさんのことを知らないところを見ると遠くからハンティングに来たようです。
「この熊はな、白月と言って、わしの友達じゃ。それをよくも、よくも!」
「熊が友達? そんな話、聞いたことないぜ。それより、その熊は俺の獲物だ。そいつは皮を剥いで俺の家の居間に飾るんだ。じいさん、そこをどきな」
ハンターの一人が言いました。
源造じいさんは両手を広げ、白月を守るようにハンターの前に立ちはだかりました。
「わしの目の黒いうちは、この白月には指一本触れさせんぞ。白月を撃ちたかったら、まずわしを撃て!」
「まいったな。このじいさん、いかれてるよ」
その時、白月がグフッ、グフッと咳をしました。同時に口から大量の血が吐き出されます。白月の目は虚ろでした。源造じいさんには「早く楽にしてくれ」と言っているように思えて仕方ありません。
どうやらハンターの撃った弾は、白月の肝臓や胃を撃ち抜いているようです。これは致命傷と言ってもいいでしょう。
源造じいさんは白月に抱き着き、大声を出して泣き出しました。ただでさえ皺が多い顔が余計クシャクシャです。