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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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ヘリテイジ・セイヴァーズ-未来から来た先導者-(後半)

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「ありがとう、じいちゃん。俺にいつも言っていた、『偉そうな口を叩く前に、自分が地に足を着かないと意味がない』―この言葉の真意、ようやく分かった気がする」
 光大は、白い球体を優しくなでる。亡くなった祖父にいつもされていた、暖かいぬくもりを感じる。
「コータ!」
 倒れこみながら、自分の名を呼ぶ女性の声が聞こえる。
 光大は彼女の下へと駆けつける。
「・・・・・・やったな」
「ああ」
 乙姫の手をつなぐ。すると、
「!」
 白い球体から光が再び発し、乙姫の体を優しく包み込む。
 暖かな光は、彼女が受けた傷をみるみる癒していく。
「―すごい・・・・・・これがおまえのインスペクトの力か」
 乙姫は光大の手を握りながら、立ち上がる。
「やっぱり、インスペクトだったんだ。・・・・・・ああ、これ返すね」
 光大は乙姫から借りていたインスペクトを彼女に渡す。
「白・・・・・・か。私の時代にはそんなインスペクトはなかった。一体誰が・・・・・・?」
「まあ、誰かが未来から来たってことは言えそうだよな。でも、それはまたにしようぜ。どうせ分からないんだから。とりあえず、助けてもらえただけでも感謝しようぜ」
「そうだな」
 二人はお互いに微笑み合う。そして、
 ガシッ!
「え、えぇぇぇぇっ!?」
 いきなり、乙姫が抱き着いてくる。こんなこと、人生では初めてのことだ。花楓ですらやってくれない。初めての感覚に光大はドギマギする。
「お、乙姫、さん・・・・・・これは、一体・・・・・・」
 心臓をドキドキしながら、抱きつく乙姫に訊ねる。
「ありがとう。守ってくれて・・・・・・そして、生きていてくれて」
 彼女のクールな口調らしからぬ、感謝の言葉が光大の右肩に漏れる。
「あ、ああ、そういうこと。じゃあ、俺からも礼をしないとな。―ありがとう、気づかせてくれて」
 光大は微笑みながら感謝の言葉を述べる。
「な、なんで私にそんなことを言うのだ?」
 不思議そうに乙姫が訊ねる。
「・・・・・・ひみつ」
 と、光大は呟き、この紫の異空間を見つめた。
 すると、
『人の子よ』
 何もない異空間から声が聞こえてくる。
 すると中空に紅い光が集まり、一つの珠となって、ゆっくりと降りてくる。
 乙姫は光大から離れ、二人は珠を見つめる。
『そなた達のおかげで、我は悪しき霊の呪縛から解くことができた。感謝する』
 紅い珠から聞こえてくる。
「あ、あんたはまさか・・・・・・」
 恐る恐る光大は訊ねる。
『我はこの島を守る四聖神の一人、火奄だ』
 やっぱりそうか、と光大は思った。
「四聖神、火奄。早速、訊きたいことが・・・・・・」
『案ずるな、社殿創建の子孫よ。我自ら、この島の真なるものをおまえたちにすべて教えようぞ』
「社殿創建の、子孫・・・・・・!?」
 乙姫がそう呼ばれ、光大は思わず彼女の方へ顔を向ける。
 彼女は頷き、光大に答える。
「ああ。私は、西暦五九三年に世界遺産である厳島神社社殿をご創建した、佐伯鞍職(さえきくらもと)が先祖なのだ」
 『そう』と言い、紅い珠が言葉を続ける。
『そしてわが主、道真の手により我らは邪霊から守るため、社殿に宝珠として結界を張り、守っていた。しかし・・・・・・』
 火奄は哀しそうな表情を紅い珠の奥からのぞかせるように、
『人間の欲望による環境破壊により、宮島はそこから生まれた邪霊―おまえたちが言うポルタ―ガイストなる者たちが、内側から蝕み始めたのだ。破壊しつくす怨みから、な』
 その言葉に体に見に覚えがある、と光大は感じた。自分も好きな宮島の風景を政府の手によって、奪われてきた。宮島に住むたくさんの人々の大半もそうだった。その怒りと似ている気がするのだ。
「あんたの望みは、ポルタ―ガイストの封印と、環境破壊を防ぐことだな?」
 光大が訊ねる。
『そうだ。そして、我らをまた終結させてほしい。邪念たちにより我ら四聖神は憑りつかれ、今もなお、どこかで邪霊たちを生み出している』
「分かった! だったら、俺が―俺たちが止めてやる! ポルタ―ガイストも! 腐敗した政府のやり方も! 現実に背を向けている奴らに教えてやる!」
 光大は、勢い任せに右手を振り、火奄に決意を告げる。
 勝手に宣言した光大に、乙姫は、
「いいのか? これは私の問題なのに・・・・・・それに命の保証も・・・・・・」
 と、心配そうに訊ねる。
 光大は、何を今さら、と笑みを浮かべながら。
「これは乙姫の問題じゃねぇよ。現代(いま)を生きる俺たち自身の問題だ。乙姫のような未来にいる人たちに申し訳が立たねえし、それに・・・・・・」
「それに?」
「俺がやりたいんだ。別にそれは、菅原道真の末裔だからってわけじゃねえ。自分で足を踏んで確かめたいんだ。今はなんて言ったらいいか、分からないけど、現実は……前へ進まないと変えられないだろ。俺は、そのために乙姫と戦う」
「コータ・・・・・・」
 ニッ、と笑って親指を突き立てる光大を、乙姫は頼もしく見える。彼から、決意と覚悟が滲み出ており、横槍を入れるような真似は通用しそうにない。
 やれやれ、と言った態度で、
「分かったよ。・・・・・・ありがとう」
 と言い、お互い微笑みながら見つめあう。力を合わせば、きっと大丈夫だ。そんな確信が光大にはあった。
『決まったようだな。では、我は宝珠となっておまえたちの下で見守るとしよう。我が必要なとき、力となろう。そなたたちの働き、期待しておるぞ』
 紅い宝珠はゆらゆらと光大のもとへと渡り、まがまがしい紅い光が消えた。おそらく、眠りについたのだろう。
「四聖神が私たちの味方をするとは・・・・・・心強いな」
「ああ」
 二人は、紅い宝珠を見つめる。四聖神に託されたこの想い、必ず果たして見せる。二人はそう誓った。希望の灯を照らすために。
「じゃあ改めて、同じ志を持つ者同士、よろしくな」
 と、光大が手を出す。
 乙姫は一瞬ためらうが、コホン、と咳払いして、
「あ、ああ。よろしく」
 乙姫は光大の手を固く握った。
 光大も強く握りしめ、微笑んだ。