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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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ヘリテイジ・セイヴァーズ-未来から来た先導者-(後半)

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 ―花楓と葦貴がいる、その空気に満足していた自分がいた。それだけで居心地が良かった。しかし、二人は、『自分』というものしっかり持っている。それが『夢』という形に変化しているのだ。そういう二人が羨ましく、苛立っていた。この満足していた空気が失われていくことが怖かったのだ。
 その恐怖のあまり、自分は彼らと対極の立場にいるではないか。『夢』を持たないことに校長の言葉に苛立ち、政府の痛みを伴う『夢』への創造についても苛立つだけ。
 そう。ただ、それだけ。

 ―行動していない。

 言葉が重くのしかかる。
 そうだ。俺は動いていないんだ。なのに、口先では偉そうに言っている、ただの口先人間だったんだ。
「そう、だったんだ・・・・・・」
「コータ?」
 不思議そうに、膝をついて俯いている光大を見上げる乙姫。
 彼は、悔しそうに歯ぎしりを立てる。
 自分が前に出ないと、今の状況、現実、そして未来、何もかも変わらないじゃないか!
「だったら・・・・・・」
「!」
 光大は乙姫のインスペクトを右腕につけて、自分の胸に込みあがる決意を叫ぶ。
「俺がこの運命を変えてやる!」
「ば、バカ!」
 光大は走りだし、火奄と対峙する。
「む、無茶だ! インスペクトを始めて使うおまえには使いこなすことは愚か、人間の適性において扱える保証はない! 無駄なことはやめろ!」
「やってみないと分からないだろ! うおおおおおっっっ!!」
 光大はインスペクトから乙姫が使っていたボウガンを取り出し、矢を放つ!
 しかし、うまく定まらず、命中しない。
 でも、諦めない! 足掻いて行かないといけないんだ!
 しかし、命中しないのならこちらからいくぞ、と言わんばかりに光大を目がけて火炎放射を吐く!
「うわっ!」
 光大は横に転がって何とか避ける。しかし、背中が焦げた感覚を感じる。
「くっ」
 焦げた感覚が、体に痛いほど伝わり、よろけてしまう。でも、弱音を吐くわけにはいかない。根性で、必死に耐える。
 その姿が分かるかのように、乙姫が、
「コータ! これ以上戦ったら危険だ! 頼むから逃げてくれ!」
 と、必死に懇願する。
 しかし、
「うるさい! ここで、俺は逃げてちゃいけねぇんだよ」
 と反論する。
「めんどくさいけどよ・・・・・・このまま逃げてたらきっと俺の大切な・・・・・・島の人々もやられてしまう。そんなのはいけないんだ。今ここで倒さないと島が大変なことになってしまう。それに―」
 自分の想いを光大は吐き出す。
「ここで、逃げてたら、一生後悔するし、ずっと逃げ道を人生で回ってしまう気がするんだ。俺は、そんなだらしない人間になりたくない!」
「コータ、おまえ」
 光大は必死に抵抗し、火奄の火炎放射を避けつつ、矢を放つ。しかし、
「ハァ、ハァ・・・・・・」
 彼も逃げるのに限界が近づいてきた。
「くっ、くっそ・・・・・・」
 しぶとい奴め、と自分を見下す火奄をにらむ。
「コータ、もうやめろ! 頼むから逃げてくれ!!」
 悲鳴にも等しい、乙姫の懇願が響く。
 まだだ、まだなんだよ。
 乙姫のためにも諦めるわけにはいかない。でも、このまま逃げても勝率は低い。光大もそれは分かっている。でも、負けたくない。

 ―守る力があれば。

 俺に、力があれば、現実を壊すほどの力が・・・・・・。
 思わず、形見の白い球体を握り占める。
(じいちゃん。俺、やっと分かったんだ。苛立っていたのも全部、自分が動こうとしないからってことが。俺、今も、この先も、守りたいんだ。俺が知っている大切な風景を。頭の悪い大人たちを見返してやりたいんだ。この宮島って場所がいかに素晴らしい場所であるかってことを。だから、急にこんなことを言うのは、少々おこがましいかもしれないけど・・・・・・)

 ―俺に力を。みんなを守る力を貸してください。

 すると、
「え!?」
 左腕につけている光大の祖父の形見―突如、封印が解放されたかのように白く光りだす!
 それは紫色をいた不気味な異空間全体を白く染めた。
「こ、コータ・・・・・・」
「な、なんだ!?」
 乙姫のみならずそれを所持している本人すら同様が隠しきれない。すると、白い球体から武器が生成されて、光大の右手の中で形作られる。
「こ、これは・・・・・・剣!?」
 白い柄と鍔に少し剣先が曲がった剣。すべて白一色でまとまった美しい剣だ。剣身からは、自分の顔が映る。
 ―これなら、いける!
 何も根拠はないが、自分の心がそう感じる。
 その確信を信じて、光大は剣道の時のように、おもいっきり剣を縦に振るう!
 すると、剣戟が刃となって、火奄を切り裂く! 
「ゴワアァァァッッ!!」
 ―き、効いている。
 龍が悲鳴を上げている。
 その姿に思わず驚く光大と乙姫。
「コータ、おまえ一体何をしたんだ?」
「あ、いや、突然、じいちゃんの形見が光出して、そしてそっから、おまえのインスペクトみたいに武器が―剣が現れて・・・・・・」
 光大は左腕につけている形見を乙姫にみせる。白く光る球体。それを見て、
「おまえのそれ、まさか―」
 しかし、そんな詮索する時間は与えない。
 火奄は再び、光大に向かって火炎放射を放つ!
「おっと」
 もう、その攻撃に慣れたのか、光大は軽快にタイミングよく転がってかわす。
「やれやれ、無駄話するなってか」
 火奄を見上げる光大。光大は武器を構えて集中する。
「グオオオオオーーーーーーッ!!」
 紅き龍は、咆哮し、今までよりも強烈な猛火を吐く!
 それを垂直に勢いよく跳躍してかわす。これもインスペクトの力なのだろうか。乙姫のように、人間離れの跳躍ができる! 火奄と同じ高さに跳躍した瞬間、
「くらえ!」
 先ほどのように剣を勢いよく横に振り、剣戟をぶつける!
 火奄は仰け反り、悲鳴をあげるも、すぐさま突進してくる。最後の手段を実行しているかのように!
「くっ!」
 中空にいる、光大に迫ってくる! このままでは火奄の大きな口に飲み込まれてしまう!
「・・・・・・頼む、じいちゃん。俺に力を・・・・・・!」
 すると、形見が呼応するかのように、光大を光に包む。 そして!
「コータ!」
「!」
 光に包まれた光大は、火奄に飲み込まれる瞬間、頭上へと移動した。火奄は上空から、目標がどこにいるのか、なりふり構わず飛び回っている。彼が頭にいることすら、気づいていない。
 この隠された力に驚きながら、
「じいちゃん、ありがとう」
 と、天国にいる心から感謝して、光大は剣を掲げて、
「うおおおおおっっ!!」
「いけ! コータ!!」
 スギャアーーーーーーン!!
 火奄の頭上に突き刺した!
 紅き龍は、悲鳴をあげて、ポルターガイストたちの魂の塊だろうか。龍は紫の粒子となり、還っていった・・・・・・。
「うわあぁぁっ!」
 突然、火奄が消えてしまったがために、そのまま光大は落下してしまう。
しかし、白い風に包み込まれて、うまく着地することができた。
 右手に持っていた剣は役目を果たしたのか、粒子となり、再び白い球体の中へと入っていった。