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太嫌兎村

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 高見沢は、赤いトンガリ帽子の建物の前までやって来て、車を止めて下りた。
 建物の門柱には大きな看板が掛かっていた。
 そして、そこにはこう書かれてあったのだ。

『太嫌兎村役場』

 高見沢はこれを見て、じっと考え込んだ。
 しかし、どうも考えがまとまらない。

「こんな奇妙な字、初めてだよなあ。これって、ホントどう読むのかなあ? 
 こんな地名、俺の記憶にはまったくないよなあ…、太るのが嫌なウサギの村って、どういうことなんだろ?  とにかく聞いてみるか」
 高見沢はぶつぶつと呟きながら、ドアーを押して建物の中へ入って行った。

 役場の中は古いがこざっぱりとした美しさと落ち着きがあった。
 整理整頓が行き届き、清潔。
 その上に花がいっぱい飾られていて、艶やかでもある。
 窓から差し込む陽光で、建物の部屋全体が明るい。

 そして高見沢はもっとびっくりする。
 役場の中で、四、五人の人たちが働いている。
 その全員がビシッとダークブルーのユニホームを身に着け、引き締まっている。

 そしてその人たちは…、皆さん女性なのだ。


作品名:太嫌兎村 作家名:鮎風 遊