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太嫌兎村

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 実にスリムな体型をしている。
 高見沢は感動に近い驚きで、もう叫ばざるを得ない。
「スっバらしい! 山の彼方(あなた)の空遠く、幸い住むと人が言う……、そうか、幾山河を越えたこの奥地に、 それはそれは美しい村がある。そして赤いトンガリ帽子の屋根の役場があって、そこではスリムで、ナイスバディーをした女性たちが活き活きと、そして、しなやかに働いている! うーん、お見事!」   

 高見沢の性格は実に惚れっぽいこと。
 すぐに嬉しい気分となり、受付カウンターの女性の所へとワクワクしながら進み出る。
「あのう、こんにちは」
「何か御用でしょうか?」と、女性が返してきた。
 高見沢は遠慮がちに聞いてみる。
「私、高見沢って言う者なんですが、ここは一体何と言う所なんですか?」 
 すると女性は、暖かく微笑みながら答えてくれる。
「たいやとむら、…という所ですよ」

 高見沢はうまく聞き取れない。
「えっ、すいません、今何て仰いました?」と聞き返した。
「た・い・や・と・むら、…で〜す」

 高見沢は少し沈黙し考え込む。
「へえ、そうなんですか、――た・い・や・と・むら――、太るのが嫌なウサギの村と書いて、たいやとむらと読むのですか、面白い地名なんですね」



作品名:太嫌兎村 作家名:鮎風 遊