太嫌兎村
幾つかの選択の後に辿り着く先。
そこには、こんな人生ゲームのファイナル・デスティネーション(最終地)があるのかも知れない。
高見沢はこんな一人遊びをしながら、1時間はドライブしただろうか、いつの間にか一山越えてしまった。
そんな時に突然、フロントガラスの前方に急に大きく開けた風景が飛び込んできた。
四方から山が迫っていることには変わりはない。
しかし目の前には、美しい盆地が現れた。
高見沢は高台で車から下りて、その盆地全体を眺めてみる。
盆地には桃の花が咲き乱れている。
「ひゃー、メッチャ綺麗な所だよなあ」
高見沢は唸った。
時節は卯月(うづき)。
少し霞がかかった青空には小鳥がチッチチッチとさえずり、野はピンクの花色一色。
キラキラと水面を輝かせて、桃の花の間を縫って、小川が流れている。
桃の花一色だが、まるで宝石をまき散らしたような美しい地。
そんな大自然の中の盆地。それが四方の山々の緑にふんわりと包み込まれている。
「めっちゃむっちゃ、ビューちフル…どっせー!」
高見沢は思わずなぜか関西風、いや字余り的な京風の感嘆の声を上げた。