太嫌兎村
太嫌兎村。
それは、高見沢が偶然迷い込んでしまった美しい村。
そこは、ひょっとしたら高見沢が長年探し求めてきたシャングリラだったのかも知れない。
しかし、もう一度訪ねて行けるかと言うと、自信がない。
国道を反れての一本道。
それをどんどんと進み、そしてその内に目の前に現れてくるいくつかの三叉路。
それらの岐路選択が迫られる。
高見沢は、そこへの道筋の手書きメモは持っている。
しかし、果たして前回とまったく同じように、間違いなく進路を選択し、太嫌兎村へ辿り着くことができるだろうか。
今度は地獄村に落ちてしまうかも知れない。
勇気が必要。
だが、高見沢は今、桃花ウサギ村長と夕月ウサちゃんに再会したいと強く思う。
あの桃の花が咲き乱れる桃源郷の風景。
帰りがけに見たあのぽっかりと浮かんだ赤い月。
その淡い月光の中で、スリムなバニーたちが手を振っていた。
その周りでは、白ウサギたちがぴょんぴょんと跳ねていた。