太嫌兎村
「残念でした、高見沢さん、男の場合はね、それは単に――、スケベなだけよ。そう、卑猥な心を満たそうとする邪悪な欲だけなんよ。だから男は構造的に、女と深い恋愛関係の中にあっても、餃子とラーメンライスをガツガツと、腹一杯食べられる野蛮人種なの。だから、男には…、恋痩せダイエットが成り立たないのよ」
高見沢は「そうなのか」と呟き、肩を落とした。
確かに男女の脳のメカニズムの違いは理解できた。しかし、やっぱり諦め切れない。
しばらくの熟慮の末、高見沢は新たなる提案を申し出てみる。
「先生わかりました。ならば、自分のためのダイエットでなくっても結構です。夕月ウサ先生の恋痩せダイエットのために、ぜひとも貢献させて欲しいと思いますが…」
夕月ウサちゃんはこんなアホな高見沢の提案を聞いて、目を丸くした。その後、きっちりと止めを指してくる。
「高見沢さん、はっきり言わせてもらいますよ。そのお年ではもう手遅れです。たとえこのコースで私のために頑張って頂いたとしても、高見沢さんは今も、そして未来も――、単なるオッサンなんですよ。だからね、決して私の身は焦げることはありません」
夕月ウサちゃんは学校の先生のような表情となり、明確に言い放ったのだった。
「あ〜あ、もうダイエットの希望を失った」
高見沢は夕月ウサ先生に止めを刺されて、ひどく落胆。それを見ていた夕月ウサ先生、高見沢に優しく声を掛けてきてくれた。