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太嫌兎村

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「どうしてよ?」
 それでも高見沢は中年男、見苦しく喰い下がった。すると夕月ウサ先生はシャキッと背筋を伸ばし、高見沢に面と向かって説明する。
「もう少し詳しく申し上げますとね、この上級の恋痩せコースはね、実は女性向けのダイエットなの、わかる?」 

「それってどういうことなんだよ?」
 高見沢は理解できない。夕月ウサ先生はガキを諭すように話してくれた。
「これは、女性だけのためのダイエットでね、つまり激しく恋をして、女性がその身を焦がしてこそ、初めて効果が出るのよ」  

 さすが夕月ウサさんはプロのインストラクター。ここ一番では、思い切ったことを恥らいもなく言ってのける。
 しかし高見沢は、話しが際どい分、余計に興味が湧いてきた。
「それって結構なお話しじゃん、だけどわからないよ。女性の場合、恋をして…、その身を焦がせば、それがなんで、女性だけのダイエットになるの? それって、どういうメカニズムなってるのかなあ?」 
 高見沢は充分に理解できず呟いた。夕月ウサ先生はこんな疑問に真顔となり、答える。

「あのね高見沢さん、脳の中に視床下部って言う所があるでしょ。そこにはね、満腹中枢と愛中枢というのがあるのよ。特に女性の場合は、これら二つが近くにあってね、言い換えれば食欲と愛欲が非常に近接しているの。まあ愛欲と食欲が同居しているようなものね、――、それで、その二つの欲が互いに強く影響し合っていて、愛欲が満足されると食欲も満足されるのよ」


作品名:太嫌兎村 作家名:鮎風 遊