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太嫌兎村

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「こんにゃくチャーハンて、あんなの…、ちがう惑星の食べ物だよ。こんなの選食にならないよ。すいません、初級コースはもう充分理解しました、次の中級コースに行って下さい」 
 早速のギブアップだ。
「仕方ないわね、高見沢さんは今日が初回のお客様だから、まあ少し大目に見てあげるわ」
 ウサ先生は今のところ割に優しい。

 それから夕月ウサ先生は一拍おいて、なんの戸惑いもなく言った。
「ダイエットの中級コースは――、ネンシよ」
「また奇妙なことを言うよなあ。ネンシって、誰かを念じて殺すのかよ?」
 高見沢は訳がわからない。

「テーマはダイエットよ、もっと頭を働かせなさいよ。つまり脂肪を燃やすという意味の…、【燃脂】よ」
 夕月ウサ先生は、また訳のわかったようなわからないような言葉を使った。
 しかし高見沢は、もうそんな会話にも慣れてきたのか、当然というような顔で応える。
「当たり前だよ、それ、選食の後は運動で脂肪を燃やさないとダメだよな、――、で、それってどんな燃やし方したら良いの?」

「高見沢さん、その第一歩は、そこの廊下で、まずウサギ飛びをやって下さい」
 えらく命令口調。

「ウサギ飛びか…」
 高見沢は懐かしく思い出した。学生時代に鬼コーチの監視の下、夕暮れのグラウンドで、後に手を回し膝を曲げてウサギ飛びをやった。


作品名:太嫌兎村 作家名:鮎風 遊