太嫌兎村
いきなり高見沢は叱られて、不純な期待は見事に崩壊させられた。しかしそれでも未練が残る。
「ですよね、…、ゴメン、夕月ウサ先生があまりにもセクシーなレオタード姿なので、お仕事忙しそうだし、ちょっと肩でも揉んでさしあげようかなと――、アキマヘンか?」
高見沢はまだ充分に正常に戻り切れていない。
「さっ邪念を払って、本題に入りますよ、いいですか?」
夕月ウサちゃんはお構いなしに、どんどんと先へと進める。
「ダイエットには、三つのコースがあります、しっかり記憶しましょうね。初級/中級/上級、その上級こそがダイエットの究極コースなのよ。高見沢さんにはダイエットの全体像を掴んでもらうために、今日半日で一通りの体験をしてもらうことになってます」
さすがプロのインストラクター、こういった勘違い男の扱いには慣れている。高見沢を軽く誘導してしまう。
高見沢はそれに乗せられて、余韻はまだ残るが、「三つのコースって…、まっいっか、じゃ初級コースから始めて下さい」とウジウジと申し入れた。
夕月ウサちゃんは「それでは始めます」と前置きをして、それから突然奇妙なことを言い出す。
「ダイエットの初級コースは、センショクです、まずこれを憶えましょう」
高見沢は何のことかさっぱり意味がわからない。
「センショクって、何か俺をしっぽりと桃色にでも染めてくれるんかい?」
やるべきことはダイエットだというのに、高見沢はまた無神経でセクハラ的な質問を懲りずにしてしまった。
今までの日々、一体高見沢は何を考えて今日まで生きてきたのだろうか。