時空を超えて言霊いくつか
ぼく 1さいはんだって
ぼくね、ゆーりくんてよばれてる。
ほいくえんのせんせが、まいあさ
たなかゆーりく〜ん、てよぶでしょ、
ぼくもみんなのまねして
てをあげるのさ。
「はあい」
くちパクだけどね。
ぼく、おとうさん大すき
おかあさんも大すき。
いつもぼくのこと
だっこしたり、にっこりしてくれる、
ときどきほっぺたをすりすり。
ねむたくたると、よしよしねんねって
ゆすってくれる。
くすぐってぼくをわらわせてくれるし。
ぼくそれ大すきなんだよ。
ぼくね、いろいろしてみたいんだ。
ぼくのもの、おもちゃってものだけど、
どうしてだか
ひとつのはこにはいってる。
どうしてだかはどうでもいいけど、
それおもしろいものばっかなんだよね。
きょうはまずレールが
あたまにうかんだよ。
でもさあ、ときどきこまるの。
ぼく、まだそれをつたえられないので、
おとうさんのゆびをひっぱってつれていく。
レールであそびたい、てぼくはいう。
おとうさんは、
「レールであそびたいのかい、わかったからそんなにさけばないでまって、まって」
あのね、ぼくなんでもわかってるんだよ。
おとながいうこと、それがなんのことかは。
でもどうしてか、ぼくのいうこと
わかってもらえないことおおいのね。
レールのうえに
れっしゃをどんなふうにならべたいか
スイッチじゃなく、じぶんでびゅーんてはしらせたい
ぼく、おもっていることちゃんといってるつもりなんだけど、
おとうさんもおかあさんもすぐにはわからないらしい。
どうしてだろう。
まあたいていはわかってくれたり、ぼくがもうわすれちゃったりすることもあるし。
このまえなんか、ぼくえほんをあけて
そこにいるこがテレビでうたったり、ダンスするまねまでしたのに、
四かいもしたのに、
ばあちゃんてひとがさ
「え、だれだって? いすさんがルラルラしておててをぶらぶらするの?」
あほなことばかりいうんだよ。
でもだんだん、うまくいってるかな。
ぼくがさ、「ほら、バス!」てゆびさすと、おとうさんが、
「お、バスだね、あかいバスがぶーって」
ぼくがバナナたべたいていうと、おかあさんが
「ゆーくん、アバだって、バナナほしいの」
じゃなくて、ぼくちゃんといってるでしょ、
そのきいろくておいしくてかわをむくもののこと。
パトカーのついたシャツかってもらった。
もう大すき。
ばあちゃんとそとにいったら、
パトカーがほんとにはしってきたんだよ。
ぼくのなかからちいさなおとがでた。
「パ!」
ばあちゃんもさけんだ、ひっかかりながら
「パパパパパトカー!」
そうそう、ばあちゃんのうでどけいね、
ときどきピッておとをだすの、それって
おねつはかるときのおととおなじなんだ。
へんなばあちゃん。
まあよくあそぶけど、いっしょに。
ほんと、ぼくのあたまのなかはいっぱい。
みんな、わかってー!
作品名:時空を超えて言霊いくつか 作家名:木原東子