時空を超えて言霊いくつか
雪の大晦日に
白い、無窮の結晶へと、たましいたちは姿を変えた。
坂道をいつものように登っていくとき
ああ、雪があたしの世界を横切った、桜の舞散るに似て。
無限の六角形、冷気に乗ってあたしと出逢った。
重い荷物、荒い呼吸、いつものくり返し、見えない終わり
死んだも同然のあたしと。
次から次へ、白い流れ、
雨ではわからない水の循環のありさま
ただ寒いこの日だけにあたしに送られて来た。
たるんだ心へどんと衝撃が来た。
みつるだった。
みつるの心が白い冷たい結晶としてあたしを訪ねて来たのだ。
いや、あたしの心が今冷やされてみつるを感じたのだ。
恋人よ、あたしを捨てて逝った。
でもここにそこにあそこに、あんたはまだ居た。
あたしも一つの結晶に過ぎないからよくわかった。
恋しさだけはいつも同じ。
今年最後の夕べ、雪の華が咲いて、あたしは恋しさに泣いた。
誰もいない、
冷たい雪に優しく囲まれて、買い物袋を打ち捨て
泣き崩れて。
作品名:時空を超えて言霊いくつか 作家名:木原東子