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杉が怒った

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第5章 T大学植物研究所附属試験林



S博士は、コンピュータの前で「なんてこった!」と声をあげた。助手の日野が「どうしたんですか?」と、S博士の様子を見て、何事が起こったのかと側によって行った。
「今、確認することがあって検索履歴をみたのだが、自分が検索したもの以外にかなりの量が検索されているんだ」
「えっ、記憶違いじゃないですか。どれどれ」
そう言いながら日野が画面の中の文字を読み上げる。
「尾高山、工事、反対運動、植生、地層、水袋、杉……」
S博士はスクロールさせて、さらに遡る。

「こりゃ、専門外だ。化学式も入っている。もっぱらアルカロイドだな」
「誰が……」
「わからん、もしかしたら人間ではないかもしれない。いや、これは当然【ジン】と考えるのが妥当だろう」
「博士、何を言いだすんです。コンピュータで検索するサルもいませんよ。ましてや樹木だなんて」
笑いながらそう言った日野だが、S博士の真剣な表情を見て真剣な顔になった。
「【ジン】は日々進化していたのだ」
S博士が呟いた。それからS博士は、履歴から尾高山の工事のいきさつを読み始めた。

「うーむ、私はこの時期に長野にいたので、ちらっとしか耳にしていなかったが、この工事はとんでもないことをしていたんだ……これを【ジン】が【知っている】ということは……」
助手の日野はまだ、何も把握してはいない。ただ、重大なことが起ころうとしていることは解ったのだろう。S博士が履歴を遡って読んでいるコンピュータの画面を見ていた。

作品名:杉が怒った 作家名:伊達梁川