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杉が怒った

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さらに、莫大な予算が使われている点にもびっくりした。

――このトンネル工事には、海底トンネルを掘るのと同じセメントミルク注入法が採用されている。地質がもろく大量の出水がある場合、まず小さなトンネルを掘り、その周りの岩盤(地盤)に速乾性の液体セメントを注入し凝固させる。人為的に固めた上で、シールドカッターでトンネル本体を掘り抜く工法だ。
 この工法は、青函トンネルで途中から採用されたものだ。
 言うまでもなく、この工法で使用される速乾性のジェットセメントの単価は、通常のセメントの倍以上。自ら発熱し、早いものでは45~50秒ほどで硬化する優れものだが、大量に使用すればするほど工事費はかさむ。なんと見積もり額だけで1300億円。1m当り実に5000万円近くかかる計算だ。
 周りの岩盤から均一な圧力がかかる海底トンネルより、通常のトンネル工事のほうが難しいのは確かだ。しかし、わずか2・6キロのトンネルにこれだけ莫大な税金をつぎこむのは異常だ。だからこそ国交省は、「金のなる木」ならぬ「金のなるトンネル」をなんとしても掘りたいのだろうか――

まったくとんでもないことをしているものだと豊田は思った。政治家の資金問題や女性問題などで大騒ぎをしているマスコミが、なぜこの問題を大々的にとりあげないのだろう。これだけ税金を投入して、渋滞時間が数%減る程度のことらしい。とりあえず、何をすればいいのだ。もう、反対派を強制排除して始まった工事は止められないのだろうか。



作品名:杉が怒った 作家名:伊達梁川