マナビノ箱
でもある日、『遠足のときに何を持っていくかを隣のお友達と相談しましょう』という課題が出た。(そんなの手を挙げて答えればいいのに)となおきくんは思った。
なおきくんも隣の女子と話をしてひとつ決めた。
順番に先生が聞いていく。同じものをいう子もあった。
前の席のけんじくんが答えた。次に言おうとしていたなおきくんと同じだった。
ちょっと、ふくれながらなおきくんも答えた。
「なおき、まねしたー」列の向こうでひろしくんが言った。
もちろん、先生は、注意をしたが、なおきくんは悔しかった。
隣の席の女子が、なおきくんの腕をとんとんと落ち着けた。
なおきくんは、わざとけんじくんの椅子の裏を蹴ったことがある。
何となく、気に入らなかった。転校してきてからとっても自然にクラスに入り込んでいるし、誰とでも仲良くしているように見えた。ずっと前から、そう一年生の時から一緒だったようにそこにいた。
その時、けんじくんは、「ごめんね。いすがじゃましてた?」と眉を下げて答えた。
なおきくんは、ちょっと恥ずかしくなった。
「いや、ぼく足ながいから、あたっただけさ」と横を向いた。
かよこちゃんも振り返って、にっこり笑った。
なおきくんは、やっぱり はにかんだ。
かよこちゃんにも見られて、もっとはずかしかった。
(ごめんね、けんじくん)素直にそんな言葉が頭に浮かんだ。
でも、声には出せなかった。