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空を泳ぐひと

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あれ、今のは何だったのだろう。そう思ったら鼻の穴からすーっと色んな匂いの混じった空気がどんどんと入ってきて、頭の中にたまっていく感じがする。そのうちに今までのことが少しずつ思い出された。

あっ、塾に行かなければ。そう気が付いたぼくは自転車にまたがり、走り出した。何かわくわくするような感じだけが体に残っていたが、それがどうしてなのかはっきりしないまま、何気なく空を見た。白い雲が空半分ぐらいに広がり、その中にオレンジ色のヘビのしっぽのようなものが吸い込まれていってやがて見えなくなった。

塾で勉強している間も、ぼくの身体がふわふわと軽くなって、何処へでも自由に行けそうな感覚が残っていた。それも頭に算数と国語が入るたびに少しずつ感覚が失われて、だんだんと頭から身体全体が重くなるような気がした。かすかに残るふわふわ感が、夢だったのかなと思いながら、ぼくは塾を出て家に帰った。

作品名:空を泳ぐひと 作家名:伊達梁川