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空を泳ぐひと

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ぼくは自転車に乗って塾へ行く途中だった。雨がしばらく続いた後に急にという感じで晴れたので、いつもより気分が良かった。

果物屋の前を通るときに見た西瓜は、一番目立つところで得意そうにふんぞり返っていたし、ぼくもいつもよりふんぞり返って自転車に乗っていたと思う。

そのせいか、果物屋の角を曲がって直ぐにそれは目に入った。ぼくは「あっ」と小さい声を上げ口を開けたまま空を見上げていた。自転車を止め、青空にゆったりと浮かんでいるものを見続けた。ぼくはもっと近くで見ようと自転車を走らせた。ちょうどぼくの行っている学校の上あたりにそれは浮んでいた。

他の人も見ているのだろうかと辺りを見回したが、みんなは空なんかに興味はないといった感じで通り過ぎていく。依然としてそれは太陽の光を浴びながらオレンジ色に輝いていた。そしてゆっくりと向きを変えながら、校庭を一周するような動きを見せている。最初に丸いものだと思っていたが向きを変えたときに、後ろはだんだんとねじれながら細くなる形をしていた。

口を開けたままで空を見上げているうちに、ぼくの頭の中が少しずつ軽くなって行くような気がした。

作品名:空を泳ぐひと 作家名:伊達梁川