カクテル
そして、何故そうなったのかは憶えていないが、俺は誘われるままに彼女の家へ付いて行ったのだった。
自分の家とは逆方向の電車に乗り、まだ都会と呼べる地域の駅で降りた。
駅から遠くない七階建てのマンションのエレベータを六階で降りた。
そして大きいとは言えないがあまり飾り気のない小奇麗な部屋に通された。
薦められたソファに腰を下ろすと、予め用意してあったのか、直ぐに冷えたビールと乾き物でないつまみが出てきた。
緊張のせいもあり喉がカラカラに渇いていた俺は、ビールを一息に飲み干す。
彼女は俺の隣に座り、俺のコップと自分のコップにもビールを注いだ。
こういう事に慣れていない俺は、コップに口をつけたまま、タイミングを計っていた。
そうしている内に彼女は店ではしなかった俺たちの馴染みの店についてあれこれと話し始めた。
彼女の話しを聞いていると、俺は急激な眠気に襲われた――。
まあ良い、どっちにしても明日からは連休なのだ。
眠りの世界に落ちてゆく時、視界の片隅で彼女が服を脱ぎ始めた。
そして気のせいとは思うが最後の一枚をとった後、生身の背中が割れて……。
深い眠りの後、目覚めているのかいないのか、そんな虚ろな状態の中、俺はやけにリアルな夢を見た。
巨大な繭の中でドロドロに溶けた俺。
何も見えないがただぼんやりとした光を感じ、聞えるとも無しに何者か数人の気配を感じた。
ぼんやりとした時間の中で。
――そして、どうやら数日が過ぎた。
たかだか酒を飲み過ぎた位で数日を寝て過ごすなんて有り得ないのだが、俺は理屈ではなくすんなりと理解する事が出来た。
この部屋へ連れて来られた理由さえもだ。
連休も終ろうという頃、俺の身体はようやく成体に変態する事が出来た。