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僕の村は釣り日和10~決戦!

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 モヒカン猿が横へ跳んだ。この前の時と同じだ。
 次の瞬間、僕たちの前に不見滝の大瀑布が姿を現したのである。
 ドドーッという轟音とともに、すべてを飲み込んでしまいそうな大きな釜は、女忍者の化身である大イワナが潜むにふさわしい。
 掘っ建て小屋の脇では、又吉じいさんが腕組みをして、僕たちの方をにらんでいた。
「おはようございます」
 皆瀬さんが又吉じいさんに声をかけた。
「やっぱり来おったな。木っ端役人に、西洋小僧どもが。何じゃ、今日はアマッコも一緒けえ」
 又吉じいさんが僕たちをにらむ。その眼差しは鋭かった。何年もかけて狙ってきた魚を、僕たちが釣ろうというのだ。目も鋭くなるはずだ。
 僕は早速、『オレタチノ・ザラ?』を取り出した。
「くくく、そんなガキのオモチャで釜の主を釣ろうってのかい? 笑わせるぜ」
 又吉じいさんが皮肉たっぷりに笑った。
 東海林君はそんな又吉じいさんに目もくれず、黙々と『オレタチノ・ザラ?』を糸に結んでいる。小野さんと僕は網の支度だ。
「ふふふ、子供をあなどっちゃいけません。その笑顔もこわばることになるかもしれませんよ」
 背中でちょっとドスのきいた皆瀬さんの声がした。
「ちょっと、その糸、太いんじゃないか?」
 振り返ってそう言った皆瀬さんの声は、普通に戻っていた。
「相手は三尺もある大物だろう? だったら、20ポンドは使わないと」
 支度を終えた東海林君が笑った。
「20ポンド? どうも横文字は苦手だな」
「大体5号の太さだよ。これからの釣り方を見ていれば、糸の太さなんか関係ないことがわかるよ」
 自信満々の東海林君が真顔になった。カチッとリールのクラッチをきる音がした。

 『オレタチノ・ザラ?』は滝壺に向かって、ゆるやかな弧を描いて飛んでいった。そして、白泡の脇に着水する。『オレタチノ・ザラ?』は巻き返す流れと、波にもてあそばれている。
 だが、心配はいらない。ピンと張った糸が、ちゃんとルアーを捉えているのだ。
 東海林君はしばらく『オレタチノ・ザラ?』が水になじむのを待った。その間が異様に長く感じられる。
 東海林君が竿先をツンツンと動かし始めた。そしてふけ出た糸の分だけリールを巻く。