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僕の村は釣り日和9~秘密兵器

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「こいつも小鳥を襲うって言うからな」
 東海林君がつぶやいた。カムルチーは真っ黒な瞳を虚ろに輝かせながら、僕らを見つめていた。

 その後、小野さんは僕の家に遊びにきた。
 小野さんはていねいに僕の母にあいさつをして家に上がった。僕がいきなり女の子を連れてきたのをみて、母が「あんたもなかなかやるわね」と僕の耳元でささやいた。すると、僕の顔に血が上ったのだろう。
「どうしたの? 顔が真っ赤よ」
 母がおもしろがるように笑った。僕はその背中にアカンベーをする。
「すごい。これ、みんなルアー?」
 父の部屋でタックルボックスを開けた時の小野さんの第一声だ。その数や形に圧倒されたらしい。小野さんは目を皿のようにして、タックルボックスをのぞき込んでいる。
「これなんか、宝石みたい」
 そう言って指さしたのは、貝殻でコーティングされたスプーンだ。本当に宝石のように輝いている。
(これは魚を釣る道具で、女の子を釣る道具じゃないんだけどなあ)
 そんなことを思いながら、僕もスプーンを眺めた。この時、いつも渓流で使っているルアーが、何だか新鮮に思えた。
 やがて小野さんの目はブラックバス用のルアーへと移る。
「あははは、かわいい。何だかオモチャみたい」
 小野さんがおかしそうに笑った。それもそのはず、小野さんが手にしたのは、アライグマの形をした、遊び心いっぱいのルアーだ。
「そうだよね。それでブラックバスが釣れるんだから不思議だよね」
「ブラックバスってアライグマも食べるの?」
 とぼけて小野さんが言う。
「そんなわけないだろ。遊びで作ったルアーなんだよ。ブラックバスの闘争本能をかき立てるように作られているんだ」
「なるほど。高田がケンカを吹っかけてくるのと同じだね」
「くくくっ」
 今度は僕が笑ってしまった。
「ねえ、このカエル、妙にリアルじゃない?」
 そう言って小野さんがつまんだのは、フロッグと呼ばれるカエルの形をしたルアーだった。胴体は柔らかい塩化ビニールでできている。
 生命のまだ宿っていないカエルは、小野さんにいいようにもてあそばれている。脚を伸ばされたり、縮められたりしながら。
「!」
 伸び縮みするカエルの脚を見た時、僕の頭の中にあるイメージが浮かんだ。
「やったよ、小野さん。お手柄だよ」
「えっ?」