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僕の村は釣り日和9~秘密兵器

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 僕がそう言った途端、東海林君が僕をにらんだ。僕は一瞬、ハッとした。釜の主のことは東海林君との秘密だったのである。
「ごめん。彼女にだったらいいだろ?」
「やっと本音が出たな」
「あっ……」
 東海林君の頬が緩んだ。
「何々、釜の主だって?」
 興味津々で小野さんが僕に顔を近づけてきた。僕はその大接近に、思わず身を引いてしまった。東海林君が目配せをした。こうして小野さんも釜の主の秘密を知ることになったのである。
「ねえねえ、私にも手伝えることがあったら言ってよ」
 小野さんはすっかり同行する気だ。
「じゃあ、後でうちにおいでよ。釣るのは東海林君だから、僕たちは取り込み方を考えよう」
「釣っても写真だけ撮ってリリースするからな。なるべく魚を傷つけない方法を考えてくれ」
 東海林君が言った。
「私、編み物できるよ。柔らかい毛糸で、大きな網を作ったらどうかな?」
「それ、いいアイデアかも」
 僕はすかさず、あいづちを打った。東海林君も頷いている。こうして僕らの共同戦線は確実に結束されていった。
「さてと、こいつを投げるぞ!」
 東海林君が勢いよく竿を振った。秘密兵器のザラ?はため池の対岸目がけて飛んでいく。やはり東海林君はルアーを投げるのがうまい。太鼓型のリールであそこまでの飛距離を出すには、相当な腕が必要だ。
 小野さんも僕も、ザラ?に注目している。東海林君がリールを巻だし、竿をちょこまかと動かし始めた。
 するとどうだろう。ザラ?はまるで水面でもがくヒナ鳥のように、ちょこまかと動くではないか。
 東海林君はネチネチとルアーを動かし続けた。すると突然、水面が割れた。
「何だ?」
 竿は絞り込まれ、きしんでいる。リールからも糸は引き出されていた。
「何か掛かったぞ!」
 僕が叫んだ。
「この引きはカムルチーだな」
 東海林君が冷静につぶやいた。魚はもがくように、その身をくねらせている。
「カムルチーって何?」
 小野さんが水面を見つめたまま、興味深そうに尋ねた。知らないのも無理はない。僕だって実物を見るまでは知らなかったのだ。
「ライギョのことなんだけど、知ってるかな?」
「ああ、釣りの本で見たことがある。ドジョウを大きくしたような、変てこな魚でしょ?」
「そうそう」
 そんな会話をしているうちにカムルチーは足元へ寄ってきた。ザラ?をガップリと口にくわえている。