ここにも戦場があった
数秒後、私はのろのろと身体を起こした。いつの間にか汗が引いてしまっている。地雷原に直接落下した横尻を見ると、それ以前に細かくなっていたのか、大きなかけらは食い込んでいなかった。特注のジーンズが丈夫だったせいで、大したキズにはなっていないと思う。軍医がいない今、ここで脱いで確かめるわけにはいかない。
私は手にしたバスタオルを放り投げ、目の前のベッド下に見えるカゴから袋を取り出した。ディズニーランドで買ったらしいお菓子が入っていて、中味はそのままである。たぶんディズニーの魔法にかけられ、買ってしまったが、家に帰ってから魔法がとけて、もうどうでもよくなってしまったのだろう。その袋を使用することに決め、粉々になった花瓶のかけらを集め出した。それらは余りに細かくなっていた。その原因は私の体重にあるのかもしれない。
本当は掃除機で吸い取った方がいいのかも知れないが、この戦場に機械化部隊は配置されていなかった。
友軍に連絡を取りたいのだが、果たしているだろうか。妻と娘は外地から戻っていない時間だ。唯一内地にいるジイは通信施設が老朽化している。しかしここから一番近い。
「チェックメイトキングツウこちらホワイトロック応答願います。どうぞ」
反応が無い。「おじいちゃーん。聞こえるー」私は大声を出した。耳を澄ますと、刑事が長セリフでこれまでの経過から追いつめた経緯を喋っている。遠くで波の音が聞こえる。
作品名:ここにも戦場があった 作家名:伊達梁川