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ここにも戦場があった

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ベッドの上には、パジャマとかスカートの他に本やらお菓子の入った袋で占領され、娘はどこに寝ているのだろうと思われたが、ここは異次元なのだと納得させて、花瓶を拾い、バッグを手に前進を始めた。

予定外の労働で、私の巨体から汗が吹き出し始めた。丁度バスタオルがベッド頭のパイプに下がっていたので拝借しようと手を伸ばした途端、手にしていた花瓶が滑り落ちてしまった。それはカビーンとは音がせず、チャワンと音がして割れてしまった。

床の大部分が靴下やら、シャツ、ジーパンなどで覆われていて、クッション状態にあり、花瓶が壊れる可能性はかなり低かったのだが、なんと花瓶を落としたその下には香取線香をいれる陶器のブタが転がっていたのだった。なんと、ブタは無傷で「何があったの」という顔をしている。

もう蚊の季節でなく、まだ蚊の季節でもないのにと思ったが、ここは異次元だったと再び思い直し、破片を入れる袋を探した。その前に汗を拭きたい。バスタオルまで後わずか、目の前は花瓶の地雷原。私は立ち上がって、ベッドの端に片方の手をかけ、もう一方の手をバスタオルに伸ばした。身体が斜めになって、あと数㎝でバスタオルに手が届くという所で、ズズズズーッと音がして、ベッド全体が移動した。ベッドの設置が壁際いっぱいで無く、間を置いていたらしく百㎏の重心が移動した。
 ずずん、がりり。
 イテー!!!
バスタオルはつかんだものの、お尻の横を思いきり地雷原に突っ込んでしまった。ブタの脇腹もこすって、ブタは弾かれてベッドの下に転がった。


作品名:ここにも戦場があった 作家名:伊達梁川