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ここにも戦場があった

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私は妄想を振り払い、一歩踏み出すための足場を確保しようとした。まず寝ているCD達を起し、裸になってしまった戸川純に服を着せ、バラバラに行動しているスカパラを整列させた。ベランダに飛び出そうとしている谷山浩子を掴み、あがた森魚に監視を頼んだ。

クラシック全集とアルフィーを机の上にのせて場所取りを頼んでから、本棚を起し、音楽専科やパチパチ読本のぐったりした身体を立たせて、席に戻した。これで私はやっと娘の部屋に入れた。

まだ物足りなそうなシャーペンやサインペンをなだめて家に戻させ、ホームレスのファッション雑誌やインテリア雑誌を、段ボールのハウスに入居させた。これで机からベッドの近くまで移動できた。幸い攻撃が止んでいて、ゲリラが出て来ない限り、戦後処理は順調に進むと思われた。一息ついて、気が付いたらレタスは私のお尻の下で押し花になっていた。

もうレタスは諦めねばならない。私は何をしにここまで来たのだろう。逃げ道を確保してから、またベランダの菜園へもどるという選択肢があったが、またいつ敵に襲われるか分からない。体力も低下していることだし、ここは撤退するしかない。


作品名:ここにも戦場があった 作家名:伊達梁川